2026年3月 9日

TRAVELER'S notebook Card Size

ずっと使っていた財布が壊れてしまったのが、きっかけだった。使っていた財布は、付き合いのある縫製工場に行った際に、職人に手伝ってもらいながら、自分で作ったものだった。それゆえに気に入って使っていたのだけど、長く使ううちに、革が擦り切れて穴があいてしまったのだ。

 新しい財布をどうしようかと、いろいろ考えている中で、トラベラーズノートの形でできないかと思った。パスポートサイズを財布として使っていたこともあったのだけど、それだと自分にはちょっと大きい。もう少しコンパクトなサイズがいいなと思って考えたのが、カードサイズだった。

 まずは、以前作った革小物のサンプルを取り出して、手で握ってみたり、カードや名刺を出し入れしてみて、サイズや形を考える。そして、サイズを決めると、タイの工房にサンプルを作ってもらうようメールを送った。さらに、財布として使うには、ジッパーケースも必要になる。そこで、コットンジッパーケースを作ってくれている国内の工場にもカードサイズにあわせたサンプルを依頼した。

 サンプルが届くと、パスポートサイズのリフィルをカッターで切ってカードサイズにして、ジッパーケースと一緒にカバーにセット。ジーパンのポケットにすっぽり入るし、手にしたときのサイズ感もいい。これは使ってみたいと素直に思った。

 ジッパーケースの片方には、クレジットカードや免許証、スイカなどのカード類を入れて、もう片方は小銭を入れた。さて、お札をどこに入れようか。三つ折りにすれば、カード類を入れたポケットに一緒に入れることはできる。だけど、僕が日常持ち歩くカードを全部入れるとポケットに余地はない。そこで、クラフトファイルを作って、そこをお札入れにした。今はそれほどお札を持ち歩くわけではないし、ざっくりそこに挟むとちょうどよい。さらに、新幹線の切符にレシート、名刺などを入れておくのにもいい。まずは、これを新しい財布として使ってみることにした。

 それが昨年の4月のこと。以来、僕はカードサイズを財布として使っている。これがなかなか具合がいい。財布として使っていると、一時的にお札や小銭が増えて膨らむこともあるけれど、カバーにゴムで留めるトラベラーズノートの形状は厚みが変わってもフレキシブルに対応してくれる。カバーの中には細身のボールペンを忍ばせているから、突然メモが必要になったときにも、さっと小さなリフィルに記入できる。電車の中でふと思いついたアイデアを書き留めたり、外で電話で話しながらメモをとったり、意外とそういう機会って多いんですよね。それに名刺より一回り大きいこのサイズのノートならではのおもしろい使い方もありそうだ。

 そんなふうに実際に使いながら、ジッパーケースにクラフトファイル、ノートリフィルのサイズを調整して、最終的な仕様を決めていった。そうしてできあがったのが、先週、公式サイトにアップしたトラベラーズノート カードサイズだ。

 トラベラーズノートは、もともとA5スリムのレギュラーサイズから始まって、その3年後にパスポートサイズを発売。以来、ずっと他のサイズを作ってこなかった。その理由はいくつかあるのだけど、一番の理由はサイズ自体にトラベラーズらしい必然性や意味を持たせたかったからだ。

 最初にレギュラーサイズを使ったときに感じた、あのサイズがもたらしてくれるワクワクした感覚を大事にしたいと思った。マップや飛行機の搭乗券をざっくり挟んで旅に出たくなる佇まい。縦に細長いフォーマットが喚起する新しい使い方や表現。それこそ、トラベラーズノートを使う楽しさの大事な要素だと思った。パスポートサイズもまた、それは同じだった。だからこそ、あえてトラベラーズノートのリフィルのサイズは、A5とかB6みたいな規定のサイズとは違ったものにした。

 また、自由にカスタマイズできることが、トラベラーズノートの特徴ではあるのだけど、サイズはレギュラーサイズとパスポートサイズの2種類しかなく、その選択肢は少ない。だけど、そのフォーマットの不自由さこそが、それぞれの使い手の個性を際立たせ、想像力を掻き立てているとも思っている。なので、サイズ展開については、安直に増やさずにストイックでありたいとずっと思っていたし、今でもそう思っている。

 だから、正直に言うと、カードサイズのサンプルを作ったときも、最初に書いたように、商品化を考えてというよりも、個人的に使いたいということがきっかけだった(職権濫用ですね)。ただ、使っていると想像以上にいいなと思えたのと、20周年という節目のタイミングであれば、そろそろ新しいサイズを出してみてもいいのではと考えて、発売を決めた。

 パスポートサイズを発売したのは2009年なので、カードサイズは17年ぶりのトラベラーズノートの新しいサイズになります。この新しいサイズに何を書こうかと考えるのは、僕にとって楽しい時間です。だけどそれ以上に、実際にこのノートを手にした皆さんが、ここに何を描き、どう使っていくのかを見るのも楽しみでしょうがありません。きっと僕らが思いもよらない使い方や表現が、カードサイズをきっかけに生まれていくんだろうな。

 発売まであと1ヶ月と少し。現在、流山工場では全力で生産を進めています。楽しみにしていただけたら嬉しいです。