旅とノートの日々
先週末にはスターバックスリザーブロースタリー東京で、ノートバイキングを開催。終了後そのまま会社の夏休みに突入しました。ここ何年かは、夏休みの度に自転車日本一周旅をしているのですが、訳があって今年はお休みすることにしました。そんなわけで、今のところたいした目的も予定もないままだらだらと休日を過ごしています。
先週、『旅とノートの日々』の告知をトラベラーズファクトリーのサイトにアップしています。自分が書いた本の告知を自分で書くのは、なんだか照れくさいですね。
先週のブログで書いた通り、この本は、昨年の3月から書き始めました。休みの日や会社の帰りにカフェに立ち寄り少しずつ書き進めました。昨年の夏休みは、自転車旅をしていたから、その休憩時間や新幹線での移動時間にも書いていました。20年分のこのブログを振り返りながらその内容をベースに書いているので、まったく一から書いている訳ではありませんが、それでもたっぷり時間をかけて書きました。そして8月末に書き終わると、かねてからお付き合いのあったミルブックスの藤原さんに原稿を送って相談をしてみました。
藤原さんの返答はなかなか手厳しいものでした。「このままで出版するのは、難しいですね。だけど、大幅に書き直してもらえるのであれば考えてみます」と言われました。「内輪な細かい話が多いし、登場人物が多すぎて分かりにくい。トラベラーズノートを使っていない人も楽しく読めて、読み終わったら使いたくなるような内容にしてほしい」そう言われて改めて自分で読んでみると、確かに第三者の視点で読めば分からないところが多く、独りよがりな内容なのかもしれないと思いました。
全体の文字数を半分にしてもいいから、本当に伝えたい内容を絞り込んで書き直してほしい。さらに何も知らない人が分かるように、きちんと人物の説明や情景描写を加えるよう、基本的なアドバイスも与えてくれた。そんな藤原さんの助言を踏まえて何度か書き直しを加え、今年の1月に初稿を書き終わることができました。
それでもちろん完成ではなく、それからは藤原さんのチェックと修正を繰り返し、最終的な校正が終わったのは、6月末のこと。まさに編集者である藤原さんと一緒に作り上げた本と言うことができます。なにせ、僕にとっては初めての本作り。57歳の新人です。そのプロである藤原さんに手厳しく叱咤激励されながらの作業は、自分が会社の新人だった頃を思わせてどこか懐かしく、新鮮でもありました。
ミルブックスは、代表の藤原さんがたった一人で企画、デザイン、編集から営業、本にまつわるイベントの運営までを行っています。そのため、すべての決断を藤原さん自身が下すことができます。それこそ、僕が藤原さんに最初に原稿を送った理由にもなりますが、それは同時にすべてのリスクを藤原さん自身が負うことにもなります。出版とステーショナリーで作るものは違いますが、同じように紙の印刷物を扱う僕にとって、本を作るということは、多大な手間とそれなりのコストを要することを理解しています。藤原さんが僕の書いた本を出版すると決めてくれたことに対しては、大きな敬意を払いたいですし、少なくとも彼にとってもやってよかったと思えるものにしたいと考えています。
ある程度、文章が固まった段階で、僕は藤原さんに、本について二つのことをリクエストしました。そのひとつは装釘のデザインをトラベラーズノートの立ち上げから一緒にやってきたデザイナーの橋本さんにお願いしたいということと、もうひとつは僕の挿絵を入れたいということ。どちらも藤原さんは快諾してくれて、本が出来上がりました。
表紙の写真は、トラベラーズファクトリーで橋本さんが撮影したのですが、そこに石井さんがモデルとして登場しています。この本は僕個人の名前で出版する本ではありますが、石井さんと橋本さんの二人は、この本の中でも主要な登場人物になりますし、その二人の協力の上で完成できたことも嬉しく思っています。
いつか自分の本を出版したいというのは、子供の頃から本が好きだった僕にとって、ずっとぼんやりと心の中に抱いていた夢でもありました。このブログを20年にわたって続けてきたのも、そんな夢が動機のひとつだったのかもしれません。だけど、そのための具体的な行動を起こしていなかった僕を、石井さんが20周年を口実に、僕をけしかけてくれて、夢が実現するきっかけとなりました。
僕にとってこれまでの仕事は、本を作るという夢を実現するためにやってきたことではありません。むしろ、そのことは心の片隅に隠して、今するべきことをただがむしゃらにやってきたとも言えます。ただ、そうやってがむしゃらにやってきたことこそが、57歳になってずっと抱いていた夢の実現に導いたのを感慨深く思います。
今この時点で僕が書くことができて、少しでも誰かに読んでもらう価値のあるものは何かと問われれば、それはやっぱりトラベラーズノートのことだと思います。20年間トラベラーズノートに真摯に向き合ってきた経験と、トラベラーズノートを通じて出会えた人たちとのエピソードこそ、自信を持って誰かに伝えたいと思えることです。さらに藤原さんを始め、トラベラーズノートを通じて出会えた仲間がいたからこそ、本を作ることができました。
これは、本にも書いたように、トラベラーズノートの魔法とも言えるし、何かを本気で好きになり、本気で打ち込むことで思いもよらない角度からも夢が実現したとも言えます。すべてがそうではないかもしれないですが、僕にとって夢は劇的に実現するわけではなく、ぼんやりとふとした形で、そういえば、こんなことも夢だったんだよな、とやってくるようなものでもありました。夢は実現しても、生活が大きく変わるわけではなく、自分の生活にささやかながらも前向きな新しい指針を与えてくれるようなものなのかもしれません。
とにかく心を込めて時間をたっぷりかけて作り上げた『旅とノートの日々』を、できるだけ多くの方に手にとっていただけたら嬉しいです。先行発売をさせていただくトラベラーズファクトリーでは、オリジナルのステッカーに、読書月間のブックマークもつけて、さらに完成次第サインも入れて販売します。ぜひ、よろしくお願いします!