2024年4月22日

TOKYO EDITIONとの出会い方いろいろ

 <26歳・女性、Cさんの場合>
 私は札幌にある旅行代理店で働いている。先週、東京の本店で仕事をする上司から、こっちに移動して自分の仕事を手伝ってほしいと声をかけられた。ここ数日、私はそのことでずっと悩んでいた。

 私は旅が好きで、同じ場所に長く居ることができず、札幌に来る前はニュージーランド、その前は香港でそれぞれ1年近く働いていた。憧れだった海外で働くこともできて、そろそろ日本に帰ろうかなと思っていた頃。自分も利用していたちょっと変わった旅行代理店が、札幌に新しく支店をオープンすることになり、スタッフを募集しているのを知った。

 この旅行代理店は普通とは違って、店やレストランで手伝いをしながら泊まれる下宿だったり、長期で働ける農園や牧場なんかも紹介してくれる。扱うホテルも、アーティストが集まるゲストハウスだったり、下町のおばあちゃんが自宅を開放したような宿だったりして面白い。それにこの代理店を通じて旅をすると、同じスタイルで旅をする趣味の近い人に出会えるのも魅力だった。

 自分の好きなことだったら楽しく仕事ができると思ったし、いつか北海道に住んでみたいと思っていたこともあって、応募してみることにした。面接は穏やかな雰囲気で話もはずみ、無事採用されて働くことになった。それからの札幌での2年間は、それなりに大変なこともあったけれど、気の合う仲間にも恵まれ、充実した日々だった。

 異動の話を聞いたのは、仕事にも北海道の雪にも慣れてきた頃だった。私を認めて本店に抜擢してくれたのは素直に嬉しかったし、声をかけてくれた上司のことは好きだったから、彼女の近くで働けることも嬉しかった。ただ仕事の不安もあるけれど、それ以上に東京に住むことの不安も大きかった。東北の小さな町で生まれた私は、人混みは苦手で東京にもあまり良いイメージを持っていない。

 でも、仕事は好きだった。放浪癖があり、ちょっとエキセントリックなところがある私が、自分らしく純粋に楽しみながら働けたし、お客さんに喜んでもらえることを実感できた。今まで1年以上同じ仕事をしたことがなかったのに、札幌での2年間はあっという間だった。もともと転がるように旅をしてきたし、不安もあるけどワクワクもある。よし、やってみようかな。そう思うと私は上司に「東京に行くことにします」とLINEのメッセージを打ち込んだ。

 翌日、大通公園の近くにある文具屋でトラベラーズノート TOKYO EDITIONを手に入れるとすぐに使いたくなり、カフェに入った。そして、パッケージを開けて、最初のページを開き、「Hello, Tokyo!」と大きく書いてみた。それだけで、これからはじまる東京での暮らしが楽しいものになりそうな予感がした。大丈夫、きっとうまくいく。

 <22歳・男性、Sくんの場合>
 先月末、僕は就職のために東京に引っ越した。大学卒業までずっと仙台の実家で暮らしてきた僕にとっては、はじめての一人暮らしだった。東京の会社に就職を決めて、あらためて東京のことを調べてみると、東京は思っていた以上に大きかった。会社の近くは、家賃から考えて絶対に住めないのは分かるけど、そこから東西南北どこまで離れたらいいのか分からなかった。東京に住んでいる友人や先輩に相談したり、長時間パソコンに向かいネットで検索して決めたアパートは、東京のずいぶん端の方にあった。

 下町の風情が残るその街は、気軽に入れる食堂に居酒屋も多くて住みやすそうだし、会社まで電車で30分くらいで通えた。ただ実際に通勤がはじまると、あまりに激しい満員電車に辟易した。これを毎日続けるのはちょっときついな。テレビを見ていると、新入社員の3人に1人は3年以内に転職をするのだとニュースキャスターが言った。漠然とした不安が胸の奥に霧のように湧いてきた。

 僕が入社を決めたのは、もともと考えていた業界とはまったく違う会社だった。大学でそれなりにまじめに勉強して得た知識は、ほとんど役に立たないのは分かっていたし、会社の規模だって決して大きくはない。だけど、僕がその会社に決めたのは、それには変え難い何か面白いことができそうな予感がしたからだった。

 今は定年まで同じ会社で仕事をするような時代ではないのかもしれない。むしろ転職しながらステップアップする方が、正しいような風潮もある。それを否定はしないけれど、できればその会社で一生を賭けてやりたいと思えるような仕事を見つけられたらいいなと思っていた。

 もちろん、今はそんな確信はひとつも持てないし、そもそも不安でいっぱいだ。僕は気分を変えたくて、東京での暮らしを楽しめたらいいなと思って買ったトラベラーズノート TOKYO EDITIONの表紙を開いた。そして、今日たまたま見つけて、おいしくて感動した近所の洋食屋の情報を書き込んだ。このノートには、そんな日々の暮らしで見つけた楽しいことをたくさん書いていこう。何年か経って、このノートのカバーに傷がついて味がでる頃、いったい僕はどこで何をしているんだろう。東京で楽しく充実した日々を過ごせていたらいいな。

 <34歳・女性、Oさんの場合>
 さようなら東京。私は生まれてからずっと住んでいた東京を離れ、結婚を決めた人との新しい生活をはじめるために広島に向かっている。

 彼とは、何年か前に仕事を通じて知り合った。お互い好きになって行き来するようになったときは、その先のことを深く考えていなかった。でも恋愛のはじまりは、たいていそういうものだと思う。

 これまで何度この飛行機に乗っただろうか。私が広島の空港に降り立つと、いつも彼が車で迎えに来てくれた。彼の家で1泊か2泊だけして、また飛行機で東京に戻る。彼が東京に来てくれることもあったけど、どちらかと言えば休みが取りやすい私が広島に行くことの方が多かった。そんな遠距離での付き合いだったけど、久しぶりに本気で誰かを好きになって、その人と一緒に時間を過ごせるのが嬉しかった。

 そんなことを繰り返すうちに、もっと一緒にいたいと思うのは必然だし、その先に結婚が浮かんでくるのも当然の流れだった。ただ結婚を考えると、仕事のことが頭に浮かんだ。今の仕事は楽しかったし、これからやりたいこともたくさんあった。だけど、結婚すれば広島に住むことになるし、そうしたら仕事を辞めなくちゃいけなくなるかもしれない。それを考えると憂鬱になった。でも、結局は彼との結婚を決めた。「恋をするとき素敵なことは 何もいらないと本気で思えること」って、甲本ヒロトが歌ってるように、彼が好きだという気持ちを一番に考えた。だけど、できれば仕事は続けたかった。

 社長にそのころを話すと、まずは「おめでとう」と祝福してくれた後、しばらく悩んで「普段の仕事はリモートでもできるよね。これかもよろしく」と言ってくれた。そして、「でも、2か月に1回くらいは東京に来ないとダメだよ」と言って、トラベラーズノート TOKYO EDITIONを私に手渡した。それからバタバタと結婚に向けての準備が進んでいった。

 そして、いよいよ東京を離れるため、飛行機に乗ると、社長からもらったTOKYO EDITIONに、まずは「さようなら東京」と綴った。すると、このノートが、私と東京にいる家族や友人、仲間との関係をこれからも繋ぎ止めてくれるような気がした。ふと窓の下を見ると、美しい瀬戸内海の風景が見えた。思わず「瀬戸の花嫁」を口ずさみそうになって、ひとり顔を赤らめた。

 もちろん、ぜんぶまったくのフィクションなんだけど(34歳で「瀬戸の花嫁」はないよね)、例えばこんなふうにTOKYO EDITIONを使いはじめてもらえたら嬉しいなと思って、いつものように妄想してみました。いよいよ今週、4月25日にトラベラーズファクトリーをはじめ、日本国内、海外のトラベラーズノート扱い店舗で、TOKYO EDITIONが発売されます。楽しみにしていただけたら嬉しいです。