新しいデイパック
先週、The Superior Laborからデイパックが届いた。昨年の秋ごろ、トラベラーズファクトリーの仕入れでポーチなどをオーダーするのに合わせて、個人的に欲しくて、一緒に頼んでおいたのだ。
ここでデイパックと書いて、ふとその呼称が正しいのか不安になった。1日分の荷物が入るバッグということでデイバッグ(Bag)、1日用のバックパックということでデイバック(Back)、もしくはデイパック(Pack)? どれも語感はほぼ一緒で紛らわしい。ネットで調べてみたら、どうもデイパックが一般的らしい。ネットで名前を調べていると、デイパックの歴史が書かれたページを見つけて、つい読み入ってしまった。
僕がデイパックというものを初めて見たのは、小学生の頃だった。四つ年上の兄貴が雑誌『ホットドックプレス』を読んで欲しくなったようで、親にねだって買ってもらったのだ。鮮やかなブルーのしっかりしたナイロン生地で底には補強で縫い付けられたスエードの革。さらにティアドロップ型のボディの中心にはブタの鼻のような形のレザーが意味ありげに付いている。ここには、ピッケルやシェラカップを取り付けられる。試しに背負ってみると、びっくりするほど体にフィットする。かっこいいなあと思った。
ちょうどこの頃は、他にもダウンベストにワークブーツ、エルエルビーンのトートなど、アメリカで生まれた質実剛健で機能的なアウトドアの道具をタウンユースとして使うことが日本に広まっていった時期だった。冬山での極寒地仕様のジャケットをベースにしているとか、冷蔵庫がなかった時代に氷を持ち運ぶためのバッグとして作られたとか、雑誌に書かれていたうんちくを読んで心を躍らせた。それを持てば、どこへでも行けるし、どこでも生きていける。そんな夢を抱かせてくれた。
話は、The Superior Laborから届いたデイパックに戻る。実はこのデイパック、生地は少し違うけれど、2022年9月にT.S.L倉敷で手に入れて以来、これまで使っていたものとまったく同じ形のものだ。ちょうどキャラバンイベントで、倉敷を訪れた際に見つけて、1970年代のニューシネマに出てくるような、ヒッチハイクでアメリカを旅するシーンが頭に浮かんだ。それで一目惚れで買うのを決めた。
僕は気に入ったものがあると、常にそればかり使う傾向がある。特にバッグは、TPOに合わせて中身を入れ替えて他のバッグと併用する、なんてことはほとんどない。通勤から休日のちょっとした外出、さらに旅に出るときにも、ほぼ毎日、このデイパックを持ち歩いていた。
毎年夏にやっている自転車旅にもこのデイパックを使っていたから、自転車を止めて路上に投げ出すようなこともあったし、堤防の上で枕にして寝っ転がったこともある。雨の中で自転車を走れば濡れるし、車がはねた泥がつくこともある。さらに炎天下の中を走ったから、ショルダーベルトや背中があたる部分には汗もたっぷり染み込んでいる。
そんなわけで、去年あたりから、デイパックの生地はすっかり黒ずみ、ところどころに穴もあいて、さすがに味というにはほどがある状態になっていた。冷静になって客観的にバッグを眺めてみると、あまりにもボロボロでさすがにこれはまずいのではないか、と思った。自分の常識を疑われるだけならまだしも、The Superior Laborのイメージダウンにもなりかねないレベルだ。
そんなタイミングで、届いた新しいデイパックは、当たり前だけど汚れがひとつもない。生地を触ると、赤ちゃんの肌みたいにスベスベでふかふかしていた。さっそく中の荷物を入れ替えて、背負ってみる。すると、温かい太陽の光をたっぷり当てて干したばかりの布団のように心地いい。長く使うことですっかり体になじんだ古くて味があるものもいいけれど、新しいものも悪くない。
形は、それまで使っていたものとまったく同じなんだけど、それゆえ、気心の知れた友人みたいに余計な気遣いもいらないし、過大な期待もしない。もうこれで充分、といった気分で抵抗もなく体に馴染む。56歳になると、もう新しいものはそれほど必要がない。日々の道具は、ある固定されたレギュラーメンバーのラインアップでまわしていきたい。それゆえにこれだと思えるものが、身近な道具に増えていくのは嬉しい。今年はトラベラーズノートの20周年のイベントでいろいろな場所に行く予定なので、このバックパックを背負って旅をするのが今から楽しみ。
現在、20周年に向けた新しい商品の生産が真っ最中だ。僕は、半年ほど前から、その試作品を使っているのだけど、これもまた僕の日々の道具の新たなレギュラーメンバーに加わりつつある。わずか半年なのに、ルーキーというより、ベテランの送りバントが得意な内野手のような風格すら表れているように見える。
なんだかずいぶんもったいぶった言い方で申し訳ありませんが、4月に発売する新製品情報は、3月に公式サイトにアップする予定です。楽しみにしてお待ちいただけたら嬉しいです。