2025年12月16日

Hello from Chiangmai

 約2年ぶりにチェンマイにやってきました。東京では、寒気の影響でいよいよ本格的な冬が到来したとのことですが、ここチェンマイではTシャツで暑くもなく寒くもなく快適に過ごせる気持ち良い日が続いています。気候が良いからか、12月のチェンマイは観光客が最も多いようです。ただ、感覚的には街を歩いてもいつもより人が多いとは感じません。とにかく、ここに来ると自然と心は穏やかになります。

 久しぶりにトラベラーズノートの革カバーを作る工房を訪れると、オーナー夫妻は私たちをいつものように温かく迎えてくれました。「ああ、またここに帰ってきたんだな」と、僕は遠くに住む親戚を訪ねたような気分になります。工房では、新しい商品のチェックに、進行のスケジュールを話しました。その中には、当然、課題や交渉もあるのですが、厳しく詰め合うというよりは、同じ悩みを一緒に解決しようというスタンスで仕事ができるのです。

 工房での打ち合わせが一段落すると、近くでランチをとります。ランチはチェンマイ名物のカオソーイを食べることが多いのですが、今回連れて行ってくれたカオソーイ屋は、ちょっと変わったお店でした。日本風のインテリアに、食器にロゴのデザインも日本を意識したものになっています。店に掲げられたコンセプトのような説明文を読むと、テキサスのダラスで寿司職人をしていたウィンさんと、日本でデザインを学んだオパールさんの二人のタイ人が始めたお店のようです。

 日本風のお盆に並ぶカオソーイの味は、どこか洗練された味で、その分若干パンチ力に欠けているようにも感じましたが、まさにチェンマイのカオソーイでもあり、とてもおいしくいただきました。店内は多くのタイ人で賑わっていて、人気がある店なのが分かります。日本風のインテリアは、日本人観光客を意識しているわけではなく、純粋に地元の人を対象にした味付けのようです。

 今回のチェンマイ訪問で感じたのは、日本文化の人気です。あるショッピングモールでは、渋谷駅前の交差点を意識した装飾があったり、なんでもないお菓子のパッケージに「頑張って」と日本語で書かれていたり、日本食のレストランは、高級な店から庶民向けのものまで至るところにありました。トラベラーズノートをきっかけにチェンマイとの関係が深まり、20年以上通い続けている身からすると、なかなか興味深い現象です。

 チェンマイでは、今回もおいしいものをたくさんいただきました。タイ北部の伝統的な料理、カントークは、竹を編んだカゴに入って出てくる餅米を主食に、ラープやチェンマイソーセージなどの味の濃いご飯のお供のような料理を一緒に食べます。今回、久しぶりに食べて、その味にあらためて感動しました。それにパッタイやトムヤムクンなどの定番タイ料理もいただきました。穏やかな気候に、優しい人たち、そしておいしい料理。あらためてチェンマイはいいなあと感動しました。

 そういえば、先日ある人が、「トラベラーズノートは、チェンマイで作っていることをアピールしているけれど、どうしてそうしようと思ったんですか?」と、まるでマーケティング戦略の一環としてそれをやっているかのように、僕に聞いてきました。

「どうしてって、チェンマイが好きだし、ほんとうにチェンマイの素敵な人たちが作ってくれているから、純粋にそれを伝えたいと思っだけですよ」と僕は答えました。それは、嘘偽りのない本当の気持ちで、あれから20年経ってその気持ちはより深まっているように思います。

 チェンマイの日程は、あっという間に終わり、バンコクに立ち寄ってから東京に帰ります。騒々しくて気温も高いバンコクは最初に訪れて、その後にチェンマイに行く方が理想的であるのですが、諸々諸事情で逆のコースになってしまいました。「やっぱりチェンマイいいですね。また来ますね」と工房の二人に伝えると、チェンマイ空港に向かいました。この季節のチェンマイ、ほんとうにおすすめです。機会があれば、ぜひ訪れてみてください。それではよい旅を。