毎朝が新しい
1月1日にアップしたブログは、実際は年が明ける前に書いたので、実質的にはこれが2026年に書く最初の日記になります。ということで、あらためまして、今年もよろしくお願いします。
1月1日のブログで名古屋に行ったことを書いたら、それを読んだ愛知県在住のトラベラーズファクトリースタッフのOBから、「名古屋に来てたのなら連絡くださいよー」とメールがあった。それを読んで「そういえば…」とも思ったけれど、彼女は新婚で、旦那さんもきっと休みのタイミング。「新婚家庭の年末のお休みを邪魔するのは憚られて、あえて連絡しませんでした」と返事をした。まあでも、正月早々、アップして間もないブログを読んで、そうやって声をかけてくれるのは素直に嬉しい。僕自身は、そういう声がけがなかなかできないタイプの人間なので、見習わないといけないな、と2026年の最初の反省をした。
名古屋では、前回のブログにも書いたようにあの後、映画を観た。観たのは、エドワード・ヤン監督の『ヤンヤン 夏の思い出』という台湾映画。これがなかなか良かった。台湾のひとつの家族の物語が、父親、母親、高校生の娘、そして小学生の息子ヤンヤンの四人の視点で淡々と描かれる。どこの家庭もそうであるように、みんなそれぞれちょっとした問題を抱えている。彼らと一緒に悩んだり、ときめいたり、悲しんだりしながら、それぞれの人生を追体験したような気分になった。
映画の舞台は台北なんだけど、父親NJとかつての恋人が東京を旅するシーンがある。台湾人監督の視点で撮影され、さらに台湾から来た旅人である登場人物の視点で見る東京は、幻想的で美しい。それを観ながら、ふと今自分がいる場所が旅をしている途中の名古屋であることに気づいて、不思議な感覚になった。言葉ではうまく説明できないのだけど、旅にいるのに旅をしているような、旅と日常が溶け合ったような、不思議な気持ちに包まれたのだ。
「自分が何を見ているかはわかっても、他の誰かが何を見ているかはわからない。いったいどうやってお互いにわかり合うことができるの?」映画の中でヤンヤンは、父親NJに尋ねる。NJはその質問に対して、「だからカメラがあるんだ、他の誰かが何を見ているかをカメラは教えてくれる」とちょっと乱暴に答える。その後、ヤンヤンはカメラを手にすると、さまざまな人の後ろ姿の写真を撮る。そして、現像すると、「後ろからの自分の姿は、自分じゃ見えないでしょ」と言って写真を本人に渡す。
映画も旅も、カメラのようにこれまで自分では見ることができなかった新しい視点を与えてくれる。新しい視点は新しい発見でもある。旅先で見る映画がもたらす不思議な感覚も新しい発見だった。
映画を観終わると、前日に続いて台湾ラーメンの「味仙」に行った。ただ、前日は支店だったけれど、この日は本店に行った。またも台湾ラーメンを食べようと思ったのは、別に台湾の映画を観たからではない。せっかく名古屋にいるのに、二日連続で同じものを食べるのもどうかと思うのだけど、僕にはそういうところがある。味噌煮込みうどんやひつまぶしにも食指が動いたけれど、お昼に通りがかった味噌煮込みうどんの店は大行列だったし、ひつまぶしなんて、大げさすぎて一人で食べる気にはなれない。この日のホテルの近くに本店があるのを知ると、夕食を「味仙」にあっさりと決めた。要は面倒くさがりなのだ。
ただここも混雑が予想されたので、まずはホテルのサウナでゆっくり過ごして、夜10時ごろに訪問。この日は台湾ラーメンとニンニクチャーハンに加えて、昨日隣の人が食べていておいしそうだった小袋も注文した。台湾ラーメンは、本店の方がスープの色も赤くて、辛さが増しているような気がしたけれど、それでもクセになるおいしさは変わらなかった。地元の人らしき席の隣の人が食べていた手羽先がおいしそうで、また来る機会があったら手羽先も頼んでみようと思った。台湾ラーメンを食べるために、台湾ではなく名古屋へ旅する。そんな旅もいいなと思った。
翌日ホテルをチェックアウトすると、再び鈍行列車に乗って東京に向かった。名古屋から東京まで6時間半。各駅停車を何度か乗り換えないといけないけれど、青春18切符だから、その合間に途中下車を何度かして一服したり、コーヒーを飲んだりする。急ぐ旅でないから、そんな時間も楽しい。ぼんやり車窓を眺めていると、青い空にちょうどいいバランスで雪化粧をしている富士山が見えた(1月1日のブログの写真はこれです)。
夕方、東海道線の最後の乗り換え駅、熱海に着く。『ヤンヤン 夏の思い出』で熱海が出てきたのを思い出して、駅を降りて少し歩いてみることにした。映画では、NJと昔の恋人が熱海を訪れる。その哀愁漂う美しいシーンを思い出して駅を降りると、年末の熱海の駅前は思った以上に賑わっていて、商店街に並ぶスイーツ屋を覗くカップルや家族連れがたくさんいた。商店街を抜けて海が見える場所まで出ると、写真を撮ってまた駅に戻った(上の写真はこれです)。
「なぜ私たちは“初めて”を恐れるのか。人生、毎日が初めてです。毎朝が新しい。同じ日は二度と来ない。それなのに私たちは毎朝恐れずに布団から出る」NJと仕事で付き合いのある日本人に扮するイッセー尾形のセリフが印象に残った。
2026年はトラベラーズノートの20周年を迎える年でもあるし、僕も恐れずにもうちょっと新しいことにも向き合おう。それにコミュニケーションにも積極的にならないとだな。2026年を迎えたばかりのタイミングで、またもしみじみ反省をした。今年は、あまり面倒がらずに、一歩足を踏み出すのを意識していきます。みなさんも新鮮な気持ちで2026年を迎えてもらえたらいいなと思います。
2026年を迎えて一週間弱。トラベラーズファクトリーのエアポートとステーションは1月1日から、京都は2日からすでに営業しています。中目黒は、1月9日、10日と抽選予約のお客様を対象にした新春イベントを開催。11日より通常オープンとなります。今年もよろしくお願いします。