2010年6月 8日

世界はたくさんの物語であふれている。


 
例えば、朝の満員列車でこんなことを想像してみます。自分が生きていくなかで、悩んだり、悲しんだり、笑ったり、喜んだり、いろいろな物語があって、これからもいろいろあるのですが、この電車にぎっしりと詰め込まれているたくさんの人達のなかにも同じように無数の物語があるということ。
 
隣の学生らしき若者は、就職のことで悩んでいたり、女の子とのデートのことを思い出したりしているのかもしれません。後ろのスーツを着た男は、新規プロジェクトの戦略を練っていたり、昨日見た映画の意味を考えていたりするのかもしれません。もしかしたら、宝くじが当たって喜びの中にいるかもしれないし、世界平和や地球環境の危機について本気で考えているかもしれません。
 
そんなことを想像していると、無数の喜びや悲しみに押しつぶされそうになったりしますが、たとえ目に見えなくても、物語は確実にそこに存在するのです。
 
さらに、人だけでなくモノにも目を向けてみます。例えば、今、自分が着ているシャツ。これはエアルームというブランドのシャツで、あるイベントで見つけて以来ずっと欲しいと思っていて、雪が降る寒い日に渋谷の事務所にみんなで買いに行ったとか、履いている靴は、黒磯のあの店で買ったもので、アメリカの小さな工房で手作りにちかい形で作られているんだとか、手に持っているノートは、トラベラーズノートっていって... などなどモノにも様々な物語があります。
 
この車両に乗っている人それぞれに物語があって、さらに彼らが身につけているモノにも物語があるとすると、もうこれは途方もない数になります。その物語をぜんぶ知る事なんてできないですが、そこに物語が在るということを想像することはできます。
 
人は人種や世代、さらには〜〜系、〜〜風などといった言葉で簡単に括られるほど単純なものではないし、モノも価格やスペックなどの数字や表層的な形では分からない価値があります。むしろ、目に見えない部分にこそ、その本質があるように気がします。
 
星の王子様の「大切な事は目に見えない」という有名な一節を思い出しました。
 

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