北極海へ
寒い日が続きます。寒いのが苦手なので、つい外に出るのをためらって家でダラダラしている時間が多くなってしまいます。せめて、頭の中だけでも旅気分を味わおうと古本屋で見つけた野田知佑氏の本を手の取りました。
野田知佑氏は、日本のツーリングカヌーの第一人者で、カヌーの旅を題材にした本をたくさん書いています。学生時代に氏の本を読んで、独自の美学に基づいた自由な旅のスタイルにとても憧れました。バイクを手に入れた当初、キャンプ道具一式を積んで、よく一人でふらりとツーリングに行ったのは、彼の本の影響も大きかったような気がします。
もともと日本でカヌーは、競技スポーツとして発展してきたため、それで旅をするというのは当時はまだ異端でした。しかもカヌーに犬をのせたり、ビールを飲みながら川を下って行くようなスタイルは、スポーツとしてカヌーを捉えている人からは、かなり批判を浴びたようです。でも、彼の提案するカヌーの旅は、自由で自分のスタイルを貫き通す大人の男の遊びの楽しさを教えてくれました。
「北極海へ」は、カナダのマッケンジー川を下っていくカヌーの旅の記録です。誰もいない荒野の川を何日も誰にも会わずに漂って行く時の寂寥感。人恋しくなれば流れ着いた小さなインディアンの集落で、彼らの家に入り込み何日も居着いてしまう。そして、また一人船を出し、孤独を楽しむ。食べ物がなくなれば、川に釣り糸をたらし魚を得たり、銃で鳥を打ち、食べる。自分のことは全部自分で決める。100パーセント自分の運命や人生の主人公である。すべての幸福も不幸も自分のせい。そんな旅に憧れます。