2011年5月11日

Autobahn


 
「ドイツにアウトバーンっていう道路があって、そこは最高速度が無制限で、時速300キロ以上で車が走ったりするんだって」
「そんなところをポルシェで飛ばして走ったら気持ちいいだろうなあ」
 
少年時代。ドイツはまだ西と東に別れていた頃。ビュンビュン飛ばすなんて、長い坂道を自転車でブレーキをかけずに走り下りていった程度の経験しかないくせに、そんなことを話していたのを覚えています。ポルシェで走っているイメージが湧き上がってきたのは、1970年代後半異常な盛り上がりをみせたスーパーカーブームの影響です。
 
それから20年。営業の仕事をしている頃は、遠隔地を担当していたため、高速道路を一日で400キロ以上走ることもめずらしくありませんでした。仙台から青森まで行くとそれだけで360キロ。一人で車を運転していると、自然とスピードも上がってしまいます。
アウトバーンと違って日本はすべての道路に制限速度が設けられています。運悪く目の玉が飛び出るような違反金を支払わなければならなくなったことも何度かありました。でも、ちょっとした緊張感を持ちながらハンドルを握り、高速道路を運転している時間は嫌いではありません。
 
果てしなく続く道。フロントウィンドウには、高速で流れていく風景と一緒に、虫がガラスにぶつかって一瞬でつぶれされていくのが見える。それでもスピードを緩めることなく、車を走らせて行く。今この瞬間、自分自身の意志によって、ここではないどこか別の場所に向かって移動しているのを体感する。
 
私にとって、美しい風景や人との出会いだけでなく、移動そのものも大きな旅の楽しみのひとつです。 最近はたまに車を運転する機会があっても、以前のようにスピードを出すことはなくなりました。でも、いつかアウトバーンをネズミ取りを気にせず、走ってみたいなあ。そのときのBGMは、もちろんクラフトワークの「アウトバーン」。今聴くと意外とのんびりトーンで、気持ちよく安全に走れそう。