2012年10月 1日

秋は突然やってくる


 
秋はいつも突然やってきます。もう10月なのにいつまで暑いんだよ・・・とか言っていると、ある日冷たい雨が降ってきて、急に肌寒くなり、半袖シャツから出た腕を手のひらでさすって温めたりする。そんな一日が過ぎると、朝や晩はすっかり涼しくなって、それまでの照り付けるような暑さが懐かしくなります。
  
秋がやってくると、ぼくはやっと灼熱の季節が終わったことにほっとするよりも、どこか憂鬱で寂しい気分に襲われます。それは、旅先でにぎやかな都会を離れ、ひとり電車やバスに乗ったときの気分に似ています。車窓を眺めていると、あっという間に華やかな街並みはさびれていき、空も暗くなってくる。すると、煩わしいと思っていた都会の騒々しさや明るく光る夜の街をふっと懐かく思い出し、寂しくなります。
 
真っ暗な車窓におでこをつけて、暗闇のなかにぽつんと寂しく佇む建物の明かりを探していると、さらに感傷的になり、さまざまな思い出が頭のなかに巡ってくるのです。読書の秋とか、食欲の秋とか言われたり、運動会や文化祭などが秋に催されたりするのは、その寂しさを紛らわすためなのではないかと思ったりもします。
 
さて、台風も過ぎ去り、本格的な秋がやってきます。コーヒーの季節です。温かいコーヒーもまた秋の寂しさを紛らわせてくれます。コーヒーとともにビスケットでも食べながら、ちょっとメランコリックな音楽を聴き、感傷的な気分でノートに何かを書き留める。すると、忘れていた記憶が頭に蘇ってきます。そんな時は、筆を止めて思い出に浸ってみます。そして、いろいろ面倒なことや辛いこともあるけど、生きていくのはそれほど悪いことばかりじゃないってことに気付くのです。