2013年3月 8日

Single Ferry Ride

20130308.jpg
 
初めて飛行機の乗った時のチケットは、複写したカーボン紙が便数分ホチキスで綴られたいかにも海外のチケット然とした佇まいで、旅行代理店から渡されるとちょっとした緊張感がありました。なくしたら日本に帰れなくなるような気がして、旅先でもパスポートと一緒に貴重品袋に入れて肌身離さず持ち歩いていました。最近はEチケットのおかげで、そんな緊張感を持つ必要はなくなったけど、同時に紙の航空券が感じさせる、ここではないどこかへ連れて行ってくれる不思議な高揚感を味わうこともできなくなってしまいました。
 
やはり世の常として、何かを得るということは同時に何か失うことでもあるようです。電車に乗る時も、スイカのおかげで、改札の前で切符を探して、あわてながら上着やジーパンの左右のポケットに手を抜き差しするようなことも減ったけど、旅の電車にはこれからもチケットが残っていて欲しいとも思います。今でも出張のときに新幹線のチケットを受け取るとちょっとワクワクします。チケットが感じさせてくれる不思議な魅力は、紙の質感やデザイン、印刷の風合いとともに想起させてくれる、何か新しい体験への予感です。感傷かもしれませんが、利便性を追求することでその魅力を失ってしまうのはちょっともったいないような気がします。
 
いよいよ発売が来週に迫った「トラベラーズスターエディション」のパスポートサイズ キャメルとリフィルには、スターフェリーに実際に乗ることができるチケットが封入されています。スターフェリーの運賃はわずか数十円なので、その金銭的な価値としての意味は、ほとんどないのですが、実際に乗ることができることにこだわり実現させるために、けっこう苦労しながら面倒な手続きを踏んできました。でも、紙のチケットが喚起させるあたらしい旅の予感を感じてもらいたかったし、そのためには、実際に乗ることができることが重要であると考えたのです。
 
それに今までチケットをモチーフにしたたくさんのプロダクトを作ってきた私たちにとって、トラベラーズのロゴが記された本物のチケットを作ることはとても楽しい作業でもありました。このチケットを手にすることで、少しでも旅の高揚感を感じてもらえれば嬉しいです。