夏は旅気分
夏がやってきた。梅雨が終わっているのか、まだ続いているのか、よく分からないけど、頭のてっぺんに降り注ぐ太陽の熱気は、とめどなく流れる汗とともに確実に夏の訪れをを感じさせる。
突然の暑さに思わずうんざりしながらも、ぼくは旅がはじまるときのような、胸の高鳴りと漠然とした寂しさが混ざり合う不思議な感覚がわきおこってくるのを感じた。夏がはじまると、いつもそんなふうに旅の気分を想起してしまう。夏の夜に風を浴びながら疾走するトゥクトゥク、避暑地にある森の木漏れ日と緑のやさしい匂い、突然のスコールがもたらしてくれる涼しい風、青い空とパームツリーの緑のコントラスト、ぼくの旅の記憶の多くは、夏の記憶と結びついている。
まだ幼かった頃、家では商売をしていたので、夏休みがはじまると、ぼくは埼玉北部のにある親の実家に預けられていた。駅に着き、祖母に手を握られて暑い日差しのなかで田舎道を歩いた時の記憶が蘇ってくる。
東京であまり感じることがない土の匂いに大きな音で響くセミの鳴き声。ふと、それまで感じていた親元を離れる解放感が寂しさに変わり、無口になってしまう。そんな姿を察したのか、祖母はお菓子屋でアイスキャンディーを買ってくれた。暑さのせいで、食べるよりも早く溶けていくアイスキャンディーを手にしながら、意図せずに心に広がっていく重苦しい空気を必死で追い払おうする。この町の市民プールには、大きな流れるプールがあって、そこで遊ぶのが楽しみにしていたのを思い出した。
「明日はプールに行こうね」
家に着けば、ひさしぶりに会う同じ年頃のいとこが待っている。寂しいけど、その分楽しいこともいっぱいあるんだ。その時ぼくは、旅がもたらす高揚感と孤独感が混ざり合った複雑な気分をはじめて知った。夏のはじまりに、旅の気分を想起するのは、そんな何十年前も昔に記憶が原因なのかもしれない。
今年の夏は、トラベラーズカンパニーキャラバンとして香港に行くことが決まった。旅には、2月のイベントで注文して最近やっと届いたKoda Styleのあたらしいバッグ、Hand clapも連れていこう。まだ1週間しか使ってないけど、すこぶる気に入っている。帰ってきたら、今年もトラベラーズファクトリーのサマフェスが開催される。山田さんの歌を聴いて、庄野さんのアイスコーヒーを飲むのは、もうすっかり夏の定番となった。
一足先に聴かせてもらった山田さんのあたらしいアルバム「pale/みずいろの時代」は、夏にぴったりの名盤で、今からライブが楽しみ。
ちょっとした不安や寂しさを感じることもあるけど、夏は旅の季節。楽しいことを考えて、良い旅をいっぱいしたいな。皆さんも、良い旅を!