香港の思い出
はじめての海外出張として香港を訪れたのは、まだトラベラーズノートが生まれる前の、今から16年前のこと。香港のお店に商品を販売してくれているディストリビューターの方と一緒にお店をまわり、商品のアピールをするのが仕事だった。英語はNHKの教育テレビで勉強していたけど、話せる自信なんてまったくないし、そもそも海外の方と長時間一緒に過ごした経験もない。そんな不安のなかで待ち合わせ場所に行くと、待っていたのは、タミーさんという自分の母親に近い年齢の女性だった。
まずはその日の流れの打ち合わせのために、ローカルな喫茶店に入った。タミーさんは、英語があまりできないぼくにあわせてゆっくり話をしてくれて、その風貌とおりの優しい人だった。ぼくは、この仕事がなんとかなりそうな気がして、香港の甘いコーヒーを飲みながら、ちょっと安心をした。
1日中、地下鉄やバスを乗り継ぎながら、大きなショッピングモールにある雑貨店やビジネス街にあるステーショナリーショップ、さらに、ダウンタウンのごちゃごちゃした昔ながらの文房具屋さんまで、香港のお店をいくつも一緒にまわった。ぼくは事前に用意しておいた英語の説明文を読みながら、必死に新しい商品の説明をしたりしたけど、タミーさんがフォローしてくれて、なんとか仕事になったというのが、本当のところだった。
香港の街で自分たちの会社の商品が売られているのを見るのはとても嬉しかったし、ぼくのだとだとしい英語の説明にきちんと耳を傾けてくれて、意見を言ってくれるお店の方や、日々、それをぼくらに変わって担ってくれているタミーさんの存在を知ることができるのは、さらに嬉しいことだった。仕事をしていく上で大切なことは日本も香港も変わらないんだな、ということに気づいた。
西洋と東洋の文化が混ざり合った国際都市、香港で、そんな風に思えたことが、自分と世界との距離をぐっと近づけてくれたし、その後、トラベラーズノートが世界に広がっていくための自信に繋がっていったような気がする。
タミーさんとは2日間一緒に過ごし、最終日には彼女の故郷でもあるマカオで商談を終えた後、マカオ料理のレストランで夕食をごちそうになった。海外での初めての仕事を終えることができて、ほっとしたのと同時に興奮していたぼくは、感謝とともにその気持ちをタミーさんに伝えようとしたけれど、英語では、その想いの半分も伝えることができず、悔しさや情けなさを感じるとともに、もっと英語を勉強しなくちゃと決意した。英語はあいかわらず未熟だけど、あの時の興奮や感動は、今のぼくに大きな影響を与えているのは間違いないんだろうな。
そんな思い出の土地、香港で今週末の7月16日、17日にトラベラーズカンパニー
キャラバンイベントとして、スパイラルリングノートバイキングなどのイベントを開催します。ぼくにとっても久しぶりに香港でとても楽しみ。ぜひ、皆様、遊びに来てください!