The History of My Passport
有効期限が間もなく切れるので、パスポートの更新をした。新しいパスポートとともに手渡された、無効を意味するVOIDの文字がパンチされた古いパスポートを眺める。10年間お世話になったこのパスポートの発行は2006年。偶然だけど、トラベラーズノートが発売された年と同じだ。眺めていると、トラベラーズノートと過ごした10年間の旅が蘇ってくる。
最初の数ページには、香港と中国の入国スタンプがぎっしり押されている。この頃は、トラベラーズノート以外の仕事もたくさんしていて、生産立会いでよく中国の工場へ行っていた。工場ではトラブルがつきもので、品質と納期を維持すべく、夜遅くまでカンカンガクガクのハードな打ち合わせをすることが多かった。なので、仕事が終わり最後に香港に入るとほっとして、お気に入りのカフェ、美都餐室でお茶を飲み、スターフェリーに乗って夜景を眺めるが楽しみだった。スターフェリーや香港の路上をバックにトラベラーズノートの写真をたくさん撮ったなあ。
香港と中国に次いで多いのが、トラベラーズノートの工房があるタイの入国スタンプ。今ではかわいい二人の子供がいるチェンマイの工房のオーナー夫妻も、10年前はまだ新婚だったんだよなあ。さらに、初の海外イベントの韓国と香港。パリのmerciでのイベント。アメリカに昨年のヨーロッパキャバン。そして、最後は4月の台湾キャラバン。10周年缶に付属している10周年ガイドとあわせて眺めると、トラベラーズノートがたくさんの旅を与えてくれたのがわかる。旅をするたびに、トラベラーズノートの世界は広がっていき、ぼくらは成長してきた。
ぼくは小さい頃、「男はつらいよ」の寅さんみたいに旅を仕事にすることが夢だった。親はまともに受け取らずに笑っていたけど、自由で旅するように生きている寅さんの姿にけっこう本気で憧れていた。あまり実感することはないけど、こうやってパスポートを眺めていると、実は小さい頃になりたかった自分にけっこう近いところにいるのかも、なんて思ったりもする。
さて、10年分年をとった自分の写真がのったあたらしいパスポートを開く。そこにはまだひとつもスタンプが押されていないけど、これからの10年もたくさん旅ができるといいな。とにかく旅をしていれば、すべてが、うまくいくような気がするんだよね。