Happy New Year 2019!
新しい年を迎えてまだ数時間。家族が寝静まった後の深夜のリビングルーム。1日がかりの大掃除のせいで、体中が倦怠感に包まれている。掃除で片付けた荷物の山から、未読の本とともに出てきたCD、ダイナソーJr.のJマスキスのソロアルバムを小さい音で流して、冷めきったコーヒーを飲み干した。
ふと壁を見上げると、ジョー・ストラマーがこちらに微笑みかけるように顔を向けている。昨年8月にトラベラーズファクトリーで開催したハービー山口さんの写真展で飾っていた写真を、思い切って手に入れ、それが今は我が家のリビングルームの壁にかかっている。この写真を見るたびに、偶然地下鉄で出会って、恐る恐る写真を撮っていいかと声をかけたハービーさんにジョーが言った言葉を思い出す。
「撮りたいものがあったら、とにかく撮るんだ。それがパンクだ」
ハービーさんは、この言葉に勇気付けられてその後ロンドンで写真家として大成していく。 ジョー・ストラマーには、そんなエピソードがたくさんあって、ライブ終了後周りに集まったファン一人一人に何時間もかけてサインをしたり、お金がなくてチケットが買えないファンを裏口からこっそりライブ会場に入れてあげたり、ファンを大事にする、やさしく温かい人だったそうだ。そういえば、ハービーさんもとても気さくでロンドン時代のことを聞く僕らに、面倒がらずその時のエピソードを面白く語ってくれた。
スペインのイベントで出会ったアーティストたちもまた、みんなとても温かく僕らを迎えてくれたし、自分の作品やトラベラーズノートに絵を描くことについて、熱く話をしてくれた。写真でも音楽でも絵でも、ひとつのことを極め、それによって何かを成し遂げてきた人には、特有の気さくさや温かさみたいなものがある。写真家はカメラや写真、ミュージシャンは音楽、絵描きは絵がやっぱり大好きだから、こちらも同じように好きならば、心を開いてやさしく話をしてくれる人が多い。
トラベラーズノートを作る時に、自分たちが好きで使いたいものにしようというルールを最初に決めたんだけど、そうやって好きなことを仕事にすることによって、好きだったり憧れの人たちへの出会いが広がるというのは、その時には予測していなかった嬉しい誤算だ。もちろん仕事でなくたって、趣味でも遊びでも好きなことを突き詰めれば突き詰めるほどにそういった出会いは広がる。
やりたいこと、行きたい場所、作りたいもの、やるべきこと、行くべき場所、作るべきもの、それが分かっていても、その先にあるかもしれない面倒なことや不安、他人の非難に足がすくんで一歩を踏み出せず、先延ばしにして、そのうちなかったことにしてしまう、なんてことはたくさんある。
「やりたいことがあったら、とにかくやってみるんだ。それがパンクだ」
ジョーストラマーの写真を見ていると、そんなことを言われているような気分になり、ちょっと身が引き締まった。Jマスキスのアルバムが終わると、クラッシュの曲が聴きたくなって、「All The Young Punks」をかけた。今年で50歳を迎えるというのに、20歳の頃と同じように胸が熱くなる。そういえばジョーストラマーがこの世を去ったのも50歳。さらに一歩足を前に踏み出し、もうちょっとがんばってみよう。壁にかかったハービーさんの写真を見ながら、年の初めにそんなことを考えた。
そんなわけで2019年もトラベラーズノートとトラベラーズファクトリーをよろしくお願いします。トラベラーズファクトリー中目黒は、今年は1月9日からスタートですが、ステーションとエアポートは1月1日から営業しています。今年は2019年カスタマイズ初め、ということで新春限定 New Year Stamp をご用意しています。
新しい年をともに過ごすノートにぜひ!