ダニエル・ジョンストンのこと
最近知ったんだけど、9月10日にダニエル・ジョンストンが亡くなったんだって。享年58歳。早すぎだよね。
ダニエル・ジョンストンって知ってる?
アメリカのミュージシャンなんだけど、ニルバーナのカート・コバーンがファンを公言し、彼のイラストがプリントされたTシャツを着ていたことで有名になったんだ。このちょっと不思議な絵、見たことないかな。これは彼の絵をマネして僕が描いたんだけどね。ほら、トラベラーズノートを持ってるでしょ。
ダニエル・ジョンストンのことは、彼のことを記録したドキュメンタリー映画「悪魔とダニエル・ジョンストン」のDVDをニルバーナのファンの友人から借りて見て、それで僕は知ったんだ。
ダニエル・ジョンストンは心が病気がちで、12歳の少年のまま心の成長をやめて大人になった人なんだ。小さい頃からコミックとロックンロールが大好きで、家の地下室にこもって曲を作って、トラベラーズノートに書き込むみたいに、ひとりでカセットテープに録音していたんだよ。絵を描くのも好きだったから、カセットテープには、彼の不思議な絵が、ジャケットとして添えられていたんだ。
そのカセットテープには、彼の絵みたいにヘンテコな曲や、びっくりするくらい美しい曲が収録されているんだけど、おばけのキャスパーに、キングコング、ビートルズなど、どの曲も自分が大好きなことを嘘偽りのない本当の言葉で歌っているんだ。でもね、そのほとんどは初恋の人、ローリーのことを歌ったラブソングなんだ。
彼はローリーを運命の人だと思っていたのに、彼女は葬儀屋をやっている別の男と結婚しちゃうんだ。そして子供もできるんだけど、彼はそれからもずっと報われないまま純粋にローリーを愛し続けて、彼女についての曲を何曲も作って、死ぬまで歌い続けたんだよ。すごいよね。だから彼の曲は、切なくて悲しくて美しいんだ。
新聞記者が彼の音楽を聴いて感動し、記事で絶賛したら、彼のもとにカセットテープの注文がくるようになったんだ。彼はダビングする方法を知らなかったから、注文を受けるたびに、いちいち演奏してテープに録音してたんだって。そんな風に、たった一人で地下室で録音したカセットテープからはじまった彼の音楽は、その後、世界中のたくさんの人たちに届いて、感動を与えたんだ。もちろん僕もその中の一人だよ。
彼の訃報を知って、その詩を読みながら、あらためて彼の音楽を聴き直しているんだ。「The Sun Shines Down on Me」っていう曲を訳して、ノートに書いてみたんだけど、よかったら読んでみて。
「やっぱりそうだったんだね。
僕の愚かな夢は消え去ったみたいだね。
僕はひとりぼっちで歩いていくよ。
重荷を背負うことなんて
僕は気にもしていなかったのに。
でも太陽はいつか必ず僕を照らしてくれる。
僕にはその資格があると思うんだ。
きっと太陽は僕を照らしてくれるんだ。
僕は君から見えないところに隠れてる。
壁の向こうにある部屋の隅に閉じこもって、
暗闇のなかでうじうじ這いつくばっている。
でもね、これで終わる訳にはいかないんだ。
太陽はいつか必ず僕を照らしてくれる。
僕にはその資格があるって思いたいんだ。
きっと太陽は僕を照らしてくれるよね。
僕は誰もいない道を歩いている。
でも誰もいないわけじゃないよね。
だって、道の上には僕がいる。
太陽はきっと僕を照らしてくれる。
そうすれば 希望 が目の前にあらわれるから、
僕はそれを捕まえて家に持って帰るんだ。
太陽が僕を照らしてくれたら、
僕は 希望 を捕まえられるんだ」
ダニエル・ジョンストンにとってのカセットテープは、僕らにとってのトラベラーズノートみたいな存在だったのかもしれないね。だって、みんなのトラベラーズノートには、好きなことや夢がいっぱい詰まっているし、嘘偽りのない本当の声が書かれているでしょ。僕のノートだってそうだし、きみのノートもそうだと思うよ。だから、みんなのトラベラーズノートは、温かくって優しくて、どこか切なくて美しいんだと思う。ダニエル・ジョンストンの音楽みたいにね。
そういえば、新しいトラベラーズタイムズができたんだ。数ページしかない誌面だけど、ダニエル・ジョンストンがカセットテープに録音するみたいに、僕らの好きなことや夢、本当の声を少しずつ詰め込んで作ったんだよ。どこかで見かけたら、手にとって読んでほしいな。
今日は、僕の話を聞いてくれてありがとう。ダニエル・ジョンストンの歌のリンクを付けておいたから、よかったら聴いてみて。気に入ってくれたら嬉しいな。
Laurie(ローリー)
The Sun Shines Down on Me
Story Of An Artist