怪我をしたり、楽しかったり、感動したり
子供の頃、よく怪我をした。特別活発だったり、スポーツをしていたわけでもないに、骨折をしたことも何度かあった。その中でも一番記憶に残っているのは、小学3年生の時に、鎖骨を折った時のことだ。鎖骨は首の付け根から左右の肩に伸びる骨で、転んだ時、アスファルトの校庭にダイレクトに打ち付けてしまい、骨折してしまった。
すぐに病院に連れていってもらい、骨継ぎのためにぐいぐい体を引っ張られたり、押したりされると、それがそうとう痛かったようで、失神状態になってしまった。その後、病院に行くたびに、僕は治療中に失神してしまったひ弱な少年という視線を医者や看護師からも感じて、それはちょっとしたコンプレックスのような感情を僕に抱かせた。
診察の時に、なぜかいつも担当の医者から、今日は朝、何を食べてきたかと聞かれた。その頃、僕の家では、ラーメンやお茶漬けがよく朝食に出されていた。今思えば朝食としては、変わっていたのかもしれないけれど、僕はどちらも好きだったから、当時は何の疑問も持っていなかった。だから正直に食べたものを言うと「そんなものを朝から食べているから、元気が出ないんだぞ」といつも医者に言われ、そのたびに僕だけでなく母親も否定されたような気分になって傷ついた。ある日、パンと答えたら何も言われなかったので、それからは何を食べても、パンと答えるようになった。そんな風に自分を守るために、つまらない嘘を言い続けることもまた、僕を傷つけた。心が悲しみで覆われている時に元気なふりをするのは辛いけど、自分では元気だと思っているのにそう見えないのも、少年時代の僕にとってはそれはそれで悲しい気分にさせた。
激しい痛みを感じたり、長期間片手しか使えずに困ったことあったと思うのだけど、それよりも小学3年の時の鎖骨骨折は、切なさや悲しみを伴った心の痛みとともに記憶に刻まれている。
先週の月曜日、秋分の日のこと。
最近休日のたびに通っている銭湯からの帰り道。自転車で家に向かっていると、信号のない交差点で出会い頭に車にぶつかってしまった。お互い直前にブレーキを強くかけていたので激しい衝突ではなかったけれど、僕は自転車ごと倒れてしまった。すぐに車の運転手も降りて、「大丈夫ですか」と声をかけてきた。背中を打ち付けたようで、しばらく痛みでうずくまっていたけれど、だんだんとそれもおさまってきたような気がしたし、自転車も問題ない。僕は、運転手と連絡先だけ交換して、そのまま自転車に乗って帰った。
家で座って晩御飯を食べて、立ち上がろうとすると、激しい痛みを腰に感じた。さらに夜寝ていてもそれは続いたので、次の日会社を午前休にして、病院に行ってみた。すると圧迫骨折と診断された。お医者さんはお尻に痛み止めの注射を打つと、コルセットを付けてしばらく安静にするようにと言われた。ただ、とりあえず歩くことはできるし、立ったり座ったりしている時は、それほど痛みもないので、午後には会社へ行った。それ以来、無理な動きをしたり、重いものを持ったりしないようにしながら、なんとか仕事も続けている。ただ、腰を曲げらないので、あれから靴下を履くことができない。でもこの季節は靴下を履かないまま過ごしても、それほど問題がないことにも気がついた。
そんな中、先週の金曜日に、スターバックスリザーブロースタリー東京でAMU TOKYO コーヒージャーニー スパイラルリングノートバイキングを開催。僕はコルセットを腰に巻き、靴下も履かずに参加した。
朝の8時30分に会場入りし、準備をはじめ、リザーブロースタリーのあの素晴らしい空間に、お皿に載せたたくさんの紙が並ぶと、僕らの気分は一気に盛り上がった。そして10時の開始時間になると、すぐに会場はたくさんの笑顔でいっぱいになった。ノートバイキングの後には、3種類のコーヒーのテイスティングの体験をご用意してくれ、さらにコーヒーの味を記録できるコーヒーカードを製作。コーヒーを飲みながら、できたばかりのノートを眺めたり、味をカードに書き込んだり、皆さんゆっくり時間を過ごして、楽しんでいたのも印象的だった。
今回、僕らが何よりも感動したのはスターバックスリザーブロースタリーのスタッフたちだった。ノートバイキングやトラベラーズのことを僕らと同じように、お客様に愛情たっぷりで説明し、同時にこの状況を楽しんでくれている。途中で1階で販売しているコラボ商品を会場でも購入できるよう移動したり、混み合っていたカスタマイズコーナーを広げるためにレイアウトを変えたり、よりお客様に喜んでもらえるように常にアップデートを考えている。
またたくさんのスタッフがお客としてノートバイキングに参加して楽しんでくれたり、トラベラーズノートを使ってくれている方もたくさんいて、僕らの作るものを真摯に理解しその上で一緒にお客様に楽しんでもらいたいという気持ちがスタッフ全員から伝わってきた。スターバックスリザーブロースタリーが醸し出す温かく親密な空気は、やっぱりそこにいる人たちと、そこに関わるすべての人たちが作っているということをあらためて実感できた。そして、彼らとコラボレーションをしたり、一緒にワークショップを開催できることをあらためて誇りに思った。
この日、ここに参加してくれた皆様、そしてスターバックスリザーブロースタリーのスタッフの皆様、ほんとうに楽しい時間を過ごすことができました。ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
子供の頃の鎖骨骨折は、悲しい記憶とともに僕の心に刻まれているけれど、今度の圧迫骨折はそうならないように少しでも嬉しい記憶を積み重ねていきたいな。そんなことを思いながらこの日の楽しい時間の記憶を心に刻んだ。