2025年1月14日

黒板の絵

 年が明けて仕事始めからの1週間。トラベラーズファクトリー中目黒を大掃除して、週末に年始イベント。ここ数年のルーティンのように繰り返している年始の行事がまずは一段落した。そして、イベントが明けた休日にほっと一息ついてファクトリーで買ったコーヒーを豆を挽いて飲む。今年はアアルトコーヒーのアルヴァーブレンドとかもがわカフェのハウスブレンドを買ったけど、どちらもしみじみとおいしい。深煎り好きにはおすすめです。

 トラベラーズファクトリー中目黒の大掃除については、本当のことを言うと今年は午前中に会議があったので、午後から参加した。さらに掃除はみんなに任せて少ししかやらずに、ほとんど黒板に絵を描いただけで終わってしまった。

 黒板には、レギュラーサイズのクリアホルダーのために描いたイラストをそのまま描いた。このイラストは、ダイアリー制作時にLOVE AND TRIPのテーマにあわせて描いたんだけど、トラベラーズノートを中心に、好きなものに囲まれた様子を表そうと思ったのだ。

 ただ僕自身が個人的に好きなもの、というよりトラベラーズノートを使っているみんなが好きなものをあえてピックアップしてみた。例えば、奥にでんと座っている子猫。僕も猫は好きだけど、実際に飼ったことはないので、正直に言えば好きだと胸を張って言うほど猫のことを知らない。

 なので、身近に知っている猫を飼っている何人かの人を想像しながら描いた。猫を飼っている人が猫について語るときは、本当に好きだという気持ちが溢れているし、初めて会った人同士でも猫を飼っているのを知った途端にコミュニケーションの壁がなくなって、親しげに楽しく話している姿を羨ましく思う。そんな人が喜んでくれたらいいなと思った。

 猫の隣に置かれたビールもそう。打ち上げで飲む最初の一杯は僕も好きだけど、あまりお酒に強くないので、ぐびぐびと何杯も飲むことができない。だけど、好きな人がビールを飲む姿は、これさえあれば他にもう何もいらないというくらいに、幸せの絶頂を味わっているくらいに見える。

 カメラも嫌いじゃない。でも、荷物になるのにアメリカ出張にフィルムカメラを3台持ってきた中目黒の店長を見ると、ああ本当に好きなんだなと素直に尊敬してしまう。帰国してから、フィルムの写真を見せてもらったけれど、やっぱりデジタルにはない味わいがあっていい。カメラもそんなカメラ好きのスタッフを頭に浮かべて描いたし、スタンプもマティスの絵も同じ気持ちで描いた。そして、最後にダイアリーリフィルの表紙に、個人的によく聴くミュージシャンのステッカーを貼って、僕の好きを紛れ込ませた。だから、あのイラストは、トラベラーズノートを中心にみんなのいろいろな人の好きが集まっている姿を表現したかったのだ。

 話は変わるけど、正月休みに横浜のカプセルホテルに泊まって、その後帰りに映画『I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ』を観た。社交性が著しく欠けたこじれた映画オタクの少年の話なんだけど、これが本当に良かった。

 映画が好きで、その頭でっかちの知識から根拠のない自信とプライドを持つ主人公。思春期の自分にも思い当たるところがあって、観ながら何度も心がむず痒くなる。彼は自分が好きなことに一方的に執着して、他者への想いがないため、周りから孤立していく。その上取り返しのつかない失敗をして、さらに望みも失われて自信やプライドも打ち砕かれてしまう。そんな彼が成長するきっかけになるのが、他の人の好きを尊重しようというシンプルな(だけどとても重要な)、人生の先輩からの愛に満ちたアドバイスだった。

 好きなことを語ろう。そして、誰かが好きなことを話す言葉に耳を傾けよう。そのことで世界は広がり、誰かとの繋がることができる。まさにLOVE AND TRIPのメッセージを感じられる映画だった。

 LOVE AND TRIPの絵をトラベラーズファクトリーの黒板に描き終わると、全体が右に寄っていて、バランスが悪い。そこで、少し余白があった左側に、地球儀と本とハーモニカを描き足した。好きなものだったら、いくらでも描き足すことができる。

 トラベラーズファクトリーの年始の恒例行事も終わり、いよいよ2025年が本格的に始まる。そういえばまだ初詣に行っていないことに気がついた。今度の週末にでも亀戸天神に行ってみようかな。