2025年2月10日

The History of TRAVELER'S CHARM

 トラベラーズノートのゴムに付けるパーツとか飾りのようなものをチャームと呼んでいる。トラベラーズファクトリーでは、真鍮からピューター、水引きに寄木までさまざまなチャームを販売しているし、トラベラーズノートのゴムにチャームを付けることは、カスタマイズのひとつとしてすっかり定着している。トラベラーズノートが始めるまでは、ノートやノートカバーにチャームを付けるなんていう行為は見たことがなかった。最初にトラベラーズノートのゴムにチャームを付けたのは、いつなんだろうかと思い返してみる。

 トラベラーズノートのカスタマイズというコンセプトは、最初のサンプルが出来上がって、まずは自分たちで使っていくなかで思いついたものだった。使いながら、ビニールのポケットを革の内側に貼ったり、リフィルの表紙にスクラップをするように切符や切手を貼ったりすることを思いつき、実際にやってみると、使いやすくなったり、使うのが楽しくなったりした。

 その延長で、ずっと前にタイで手に入れてしまってあった木のビーズをゴムに付けてみた。そうすると、見た目がシンプルな革カバーのアクセントになるし、カバーを開くときに、ビーズが付いている分ゴムが掴みやすくなった。これはいいと思って、2006年の発売時のホームページに、カスタマイズ例としてビーズが付いているトラベラーズノートの写真を撮って掲載した。

 その後、無意識にゴムに付けられるものを探すようになった。タイでトラベラーズノートの工房を訪れたときには、留め具のパーツをひとつもらって、チャームのようにゴムに通してしばらく付けていた。当時訪れた大阪のチャルカは、その宝庫だった。ガラスのビーズや飾りに色とりどりのボタンなど、トラベラーズノートのチャームにぴったりのものがたくさんあった。僕は、ちょっと無骨なヴィンテージの金属製のボタンを手に入れてゴムに付けた。ちなみにこの金属製のボタンは、それから何年かしてアメリカでイベントをしたときに、お客さんからどうしてもこれがほしいと懇願されて渡してしまったので手元にない。

 チャームを付け替えるだけで気分が変わるし、旅先で手に入れたものだったり、自分の好きなモチーフだったり、自分にとって意味のあるものをトラベラーズノートに付けることで、愛着がぐっと湧いてくる。トラベラーズノートが発売されて3年目の2009年、はじめてイベントを開催することになったとき、イベント用オリジナルアイテムとして、まず考えたのがオリジナルのチャームだった。

 タイのチェンマイで、トラベラーズノートの留め具と同じ素材を使って、ミニサイズのトラベラーズノートとタグを作った。これが、トラベラーズがオフィシャルに作った最初のチャームになる。ちなみに、この2種類のチャームは、現在もトラベラーズファクトリーで販売している。

 そして、その翌年に開催したイベントでは、さらに飛行機とウクレレの形を追加。チャームは、イベントでも人気アイテムとなった。ちなみに当時の飛行機は、今のものと向きが逆で尾翼側にリングが付いていた。そうするとゴムに付けたときに、飛行機が下向きになる。それが飛行機が落ちていくのを連想させてはまずいと思って、現在の飛行機チャームは、ゴムに付けたときに上向きになるようにコックピット側にリングが付いている。

 2011年のトラベラーズノート5周年企画では、カスタマイズをテーマに、メダルをイメージしたピューターのチャームと革のチャームを発売した。さらに、同年にオープンしたトラベラーズファクトリーでは、ピューターチャームもラインアップを拡大した。このあたりから、トラベラーズノートにチャームを付ける方が多くなったような気がする。

 トラベラーズファクトリーができてからは、チャームはファクトリーの基本アイテムのひとつのような存在になり、さまざまなタイプが登場するようになった。成田空港のエアポートがオープンする際には、丸い真鍮に富士山と飛行機のデザインを刻印したブラスタグを発売。これは、アメリカにあった真鍮製のヴィンテージドッグタグをイメージして作ったのだけど、何十年も前から社章などを作っている東京近郊のプレス工場との出会いで生まれたチャームだった。

 このプレス工場では、ステーションや京都限定のタグをはじめ、昨年発売したTOKYO EDITIONのたい焼きチャームなど、その後多くのチャームを作ってもらっている。ちなみにステーションや京都、さらにスターバックスリザーブロースタリーや地中美術館などの限定バージョンのチャームを作るのは、そのチャームが手に入れた方にとって、特別な意味があるものであってほしいとの想いがあるから。トラベラーズノートに自分にとって特別な思い入れがあるチャームが付いていると、やっぱり気分があがる。

 2015年に登場した寄木チャームは、その魅力をさらに広げてくれた。もともと繋がりのあった箱根の寄木職人「るちゑ」の清水さんに、トラベラーズノート用のチャームを作ってほしいという無茶振りをして、あの丸い形のチャームが生まれた。

 著名な作家による美術品でもなく、宝石でもなくアートでもない。決して安くはないかもしれないけど、気張らずにトラベラーズノートに付けられるような価格で、だけど、職人の伝統によって受け継がれた手仕事によって生み出された美しさを感じるチャーム。まさに民藝運動の思想に通じるようなチャームが生まれた。

 寄木チャームができたことで、さらに水引チャームやシェルチャームなどの新たなチャームの世界が広がった。寄木チャームは発売して10年近く経つけど、いまだにトラベラーズファクトリーの人気商品のひとつになっている。

 ただいま、トラベラーズファクトリーでは、「るちゑ」をはじめ、「YOH KAKUDA 」、「椿井木工舎 ZweiWoodWork」、「ebiko」などの手作りの道具が並ぶイベントを開催中です。

「るちゑ」からは、寄木チャームに加え、日本の木の素材感がたっぷり感じられる「木のまんまチャーム大」が新たに登場しています。さらに「ebiko」からは、しめ縄の技法や素材を使った今までにないチャームも紹介しています。ぜひ、手に取ってご覧ください。