2025年7月28日

夏の匂い

 もう誰もが何度も言ったり、聞いたりしていると思うけど、やっぱり言わずにはいられません。毎日暑いですね〜。

 夏が好きと公言している手前もあって、暑さをものともせずに先週も自転車で会社まで行ったんだけど、なかなかキツい。朝から突き刺す日差しの中で自転車を漕いでいると、もうやばいんじゃないかと思ってくる。

 とにかく水分補給に気をつけようとボトルケージに500mlの水のペットボトルを入れて走る。家を出てから10分くらいの隅田川を超えたあたりで、最初に冷たい水を飲む。だけど走っていると、飲んだ分だけ流れているんじゃないかと思えるくらい汗が出てくる。東京駅を超えて皇居前に出ると強い日差しを浴びる芝生からは夏の匂いがする。ここでまた水を飲んで水分補給。

 六本木に向かう上り坂では、無理をせずに自転車を降りて手で押して歩く。それでも、汗がだらだらと流れてくる。信号待ちではできるだけ日陰を探して、自転車を止める(でも意外と少ない)。六本木ヒルズを曲がると、長い下り坂が続く。ペダルを漕がずに進んでいく下り坂にほっと一息つきながらも、少し頭がぼーっとしているから気をつけてハンドルを握る。ここですっかりぬるくなった残りの水をぜんぶ飲み干す。

 約15キロの行程をゆっくり1時間以上かけて走って、もうこれ以上走るのは無理かもしれない、なんて思った頃にやっと恵比寿に着く。駅の駐輪場に自転車をとめて、会社が入っているビルまで5分ほど歩く。その頃にはTシャツも首に巻いて顔に流れる汗をぬぐっていたてぬぐいもびっしょりになっている。自転車に乗っているときには気にならなかったけれど、歩いていると、そんな汗でびっしょりの姿が少し恥ずかしくなる。でも誰もそんな汗だくのおっさんのことなんて、気にしていないんだろうな。

 これって意味があるのかな? と普段は思っている屋外でミストが噴霧されている場所の前に来ると、思わず立ち止まり、しばらくミストをしばらく浴びる。会社に着くと、まずはトイレでTシャツを着替える。

 クーラーの効いたオフィスに入ると、最近導入されたウォーターサーバーから冷たい水をごくりと飲む。そうすると、もうなんだかひと仕事終えて、お風呂に入った後のような気分になる。でもそんなさっぱりしてちょっと気だるい感じが心地いいし、仕事もはかどる(ような気がする)。

 その気持ちよさを味わいたくて、わざわざ猛暑の日に、自転車で会社に来ているのだろうか。誰に頼まれたわけでもなく、自分でやっていることなのに、正直に言うと、その理由がよくわからない。もちろん、健康にいいとか、満員電車がいやだとかは、多少は動機になっているのかもしれない。でも、健康のための運動なら、もうちょっと効率がいいやり方があるだろうし、満員電車といっても最近は時差通勤しているから、それほどの混雑でもない。だけど、朝起きて、天気予報を見て、この日は雨が降らないと分かると、自転車でいきたくなってしまう。これはもう理由とかは関係なくて、性(さが)みたいなものなのかもしれない。まあ、理由もないのにノートに絵を描きたくなってしまう、みたいなことと一緒なのかもしれないですね。

 夏休みには、自転車での日本一周の続きをしようと思って、ルートを考えているんだけど、とにかく暑さが心配だから余裕を持ったスケジュールにしたい。最近の自転車通勤の感じだと、1時間走ったら30分は休むくらいにしないといけないかもしれない。さらに途中、温泉施設やカフェなどで2時間くらいの長い休憩も差し込みたい。

 そんな感じで走るとなると、やっぱりルートは敦賀から琵琶湖の東側を通って、京都、大阪、神戸あたりまでかな、なんて考えている。でも、行くのはお盆休みだし、そろそろ宿とか新幹線もとらないとまずいな。なんてことをふと思いながらも、まだ何もできていない。だって、トラベラーズタイムズはいまだ未完成だし、その他、いろいろ予定通りにいかないことが多くて…。

 とにかく暑い日が続きます。みなさまくれぐれもご自愛ください。

 話は変わりますが、現在トラベラーズファクトリーでは、アアルトコーヒーの庄野さんによる新作の本『桎梏と故障』と、出版記念のコーヒー「漆黒ブレンド」を販売しています。

 相変わらず庄野さんらしい深い意味がありそうなタイトルですが、その意味は私にはわかりません。ちなみに「桎梏(しっこく)」は、手かせ足かせという意味で転じて自由を束縛することを意味するそうです(辞書で調べました)。中身はまさに庄野節が桎梏なしで全開(こういう使い方でいいのかな)。歳をとって、こだわりをなくして普通のことをやっていくと言いながらも、権威や常識に疑問符を投げかける言葉がぐっとくる。まあパンクスだからね。

 漆黒ブレンドは、その名の通りかなり深煎りのマンデリンのコーヒー。「桎梏と故障」を読みながら、しみじみと苦くて甘みが感じられる、好みの味のコーヒーをじっくり味わって飲みました。