2007年12月21日

TRAVELER'S books 東北地方

今日は東北をテーマに、TRAVELER'S booksを選んでみました。もう10年くらい前になるのですが、5年間仙台に住んでいました。営業として青森や岩手を出張でまわったり、休みの日にはバイクで寂れた温泉行ったりしていたので、よく旅をした地域です。そんな東北の旅をテーマにした本を3冊。


太宰治「津軽」

太宰治が自らの出身地である津軽地方を旅する様子が描かれています。旧家の息子として生まれた重圧感やルーツ探しなどの要素もありますが、純粋に戦時下の津軽地方の風物を淡々とユーモアをまじえて書いているところが魅力です。太宰作品では、異色な作品ですが、人間失格や斜陽、またその人生の結末を知っているからこそ、その明るく軽い紀行文が味わい深く感じます。旅した時期も春のやさしい季節です。冬の津軽は雪深く、仕事で行くときは、後ろからトラックにあおられ、吹雪の中を泣きそうになりながら車を運転していました。そんな時期を知っていると、春の津軽はよりやさしく心地よいのです。


井上ひさし「吉里吉里人」

売れない小説家が電車で東北を旅していると、ある寒村で電車が止められる。そこは「吉里吉里国」として突如日本から分離独立を宣言した東北地方の小村。小説家もその独立宣言に始まるゴタゴタに巻き込まれていくというお話です。東北の寒村が独立するという荒唐無稽な話ながら、農業問題や少数民族の問題など国家主義への批判精神に満ち、さらに東北地方の美しい文化や自然を緻密に愛情を持って描かれています。 いっきに楽しく読めます。
 
 
つげ義春「つげ義春の温泉」
 
これは東北地方だけではないのですが、寂れた温泉を描いたら圧倒的にNo1の漫画家つげ義春の温泉をテーマにした漫画、イラスト、エッセイをまとめた本です。東北の温泉もたくさん掲載されているので選びました。仙台に住んでいる時は、バイクに乗ってたくさんの古い温泉を巡りましたが、そのきっかけはつげ義春の漫画です。朽ちかけた壁や黒光りした柱、そして長い年月流れた硫黄が岩に積み重なった露天風呂。やっぱり温泉は古くさびれたところが良いです。ただ、行くためのお金と時間がないときは、つげ義春の漫画で温泉気分を
味わってみてください。