2008年1月 9日

TRAVELER'S books 無人島

小学校の時に読んだ15少年漂流記やロビンソンクルーソーは、少年時代の幼い冒険心や旅心を刺激してくれました。今、旅が好きなのも、その影響が少なからずあると思います。無人島に漂着してしまうというのは、自分の意思ではない不可抗力による冒険であるがゆえに、そんな冒険とかけ離れた生活をしている自分にとって、無責任な憧れを感じさせてくれるのかもしれません。
 
自分の意思で旅に出られない少年時代には、その憧れもよりいっそう強いものだったと思います。という訳で、無人島への漂着ものを4冊。
 

「漂流」吉村昭著

江戸時代に実際あった史実をもとにして書かれた小説です。土佐の船乗り長平たちが無人島に漂着し、すさまじいサバイバル生活を強いられます。仲間が死んで、飢えと孤独で精神錯乱に近くな
ますが、新たに漂着した人たちと流木を作り、漂着から12年後になんとか帰ってくるまでをリアルに描いています。とにかく絶望的な状況でも、それを乗り越えて生き抜く人間の強さを教えてくれます。時代も国も違いますが、映画「キャスト・アウェイ」も同じ無人島に漂着し、そこから抜け出すまでを描いたおすすめの映画です。
 

「蠅の王」ウィリアム・ゴールディング著

十五少年漂流記とほぼ同じ設定で無人島に少年たちが漂着する話です。ただし、十五少年漂流記は、苦難を乗り越えてハッピーエンドで終わりますが、こちらは、重く残酷な形で話が進んでいきます。前者は勇気や希望、後者は狂気や憎悪がテーマになっています。どちらもすべての人間が持っている理性や本能であると認識するためにも、ぜひ読んで欲しい本です。
 

「夏の朝の成層圏」池澤夏樹著

少し風変わりな無人島ものです。まぐろ漁船から落ちて無人島に漂着した主人公は、その状況を受け入れながら淡々と島の生活を続けていきます。他の無人島小説の主人公のように苦悩や錯乱に落ち入ることもなく、漂う孤独感も絶望的というより、都会的な洗練されたイメージすらあります。読み終わった時に、清々しい清涼感と前向きな未来を感じさせてくれる、そんな素敵な小説です。孤独への正しい向き合い方を教えてくれます。
 

「ガリヴァー旅行記」スウィフト著

小人の国の話など、誰もが昔に読んだ事のある話だと思います。数年前にあるきっかけでもう一度読んでみると、子供向けではなく風刺が効いた批判精神にあふれた大人の小説でした。小人の国、巨人の国のほかに、ジブリの天空の城ラピュタのもとになっている空飛ぶ島「ラピュータ」や、映画猿の惑星を思わせる知性ある馬の姿をした種族と野蛮で下等な人の姿をした種族ヤフーが住む「フウイヌム国」など、さまざまな映画や小説の元ネタにもなっています。