2009年2月13日

My Bloody Valentine

ソフィアコッポラ監督の映画「ロストイントランスレーション」は、東京を舞台にしたロードムービー。

何かを成し遂げたいのに何もできない焦燥感に追い詰められている若い女と、既に何かを成し遂げてしまったゆえに空虚感を感じ夢を失っている中年の男。そんな2人のアメリカ人が旅先の東京をさまよう姿を淡々と描いた映画です。
 
旦那の仕事に付き添って来た女は、何かをつかもうと積極的にひとりで街を歩きますが、深く入リ込むことができず孤独感を感じている。ハリウッド俳優である男は、日本的な習慣をどこか見下しながら、投げやり気味にコマーシャル俳優の仕事をこなし、冷めた目線で東京を見つめています。
 
お互いに配偶者を持つ2人は、徐々に距離を縮めながらも、一線を超えることなくその関係を探っている。
 
日本を舞台にした映画によくあるように、出てくる日本人がおしなべて西洋人的な偏見に満ちたステレオタイプであったり、2人のアメリカ人が日本人に深くコミュニケートしようとしない姿には、純粋に日本人としていらだちを覚えます。(海外での人の見方の反面教師になります)
 
しかし、ここで描かれた東京の風景は、いままで気付かなかった魅力を見せてくれます。夜の東京をタクシーで走るシーンは、とても美しく荘厳ですらあります。
 
そのシーンの魅力を引き立てているのが、BGMで流れるマイ・ブラッディ・バレンタインのSometimes。深いディストーションとエコーのかかったギターが奏でる弛緩したようなコードストローク、つぶやくように歌うボーカル。80年代にUKロックを聴いてきた世代にとっては、この美しいシーンに、この曲が鳴ってきただけで感涙もの。
 
前置きが長くなってしまいましたが、もうすぐバレンタインデー。ということで、バレンタインにちなんで、マイ・ブラッディ・バレンタインのことを書きたかったんです。Sometimesが入っている「Loveless」は、バレンタイン向けではありませんが、素晴らしいアルバムです。
 
それでは、皆様にとってバレンタインデーが良い一日でありますように!