旅の詩集
30代後半より上の人には懐かしいKAPPA BOOKSの1冊。昭和48年発行のこの本は、昔買ったものではなく、最近古本屋で見つけたものです。
当時も今もアングラカルチャーのヒーロー、寺山修司氏が編集した旅の詩を集めた本です。各章ごと放浪、望郷などのテーマがつけられて、詩が集められています。まさに旅をテーマにした珠玉のコトバたちが詰まった本。その各章の冒頭には、寺山氏による序文がつけられています。
青森出身の氏は、少年時代にはそこを出ることを夢見て過ごしてきました。「家出のすすめ」や「書を捨てよ、町に出よう」などの著書で、若者たちに家を出ることを煽り、自らを故郷を捨てた漂泊者と認めていた氏にとって旅は、一時的な行為ではなく人生そのものであったのです。
古本として買ったこの本の裏表紙の見返しページに、最初の持ち主だった方によるものと思われる日付とサインがあります。
昭和四十八年十月三十一日(水)晴
XX川 XX子(25才)
と万年筆で丁寧に書かれています。それを見ると、計算すると今60歳になるその女性が、当時この本を読んでどんな風に思ったのか?そして、その後、この本が私の手に届くまでどんな旅をしてきたのか?と、想像してしまいます。
例えば、寺山修司的に想像すると...、東京、工場のある町の小さな喫茶店でウエイトレスをしているXX子。田舎から家出同然で飛び出してきたが、夢である女優になることを諦めて、望郷の念を感じながら、惰性で時を過ごしている。そんな時、常連の工場で働く青年が忘れた1冊の本を見つける。そして、返しそびれて最後まで読んでしまう。青年がまた喫茶店にきた時に、その本のことを思い出し話しかける。彼もまた、小説家になることを夢見ながら工場で働いていることを知る。そして、意気投合し、2人で共に夢を追いかけていく... なんてね。