2009年9月18日

深夜のクリント・イーストウッド

最近はDVDやビデオに変わってしまいましたが、昔は休日前の深夜にテレビで流れている映画をだらだらと見ているのが好きでした。
 
その頃、深夜枠でよく放映されたのは、もちろん話題の最新作ではなく、既にテレビで何度も放送された70年代のアメリカ映画。ヒッチコックのサスペンス、イージーライダーやスケアクロウなどのニューシネマとあわせて、深夜枠の定番のひとつが70年代のクリント・イーストウッドの出演作でした。
 
ダーティハリーなどで見られるアメリカ70年代の都会の生活を映した枯れた感じの映像。その危険で怪しい雰囲気がかっこ良く見えました。錆びが所々にあるアメ車で乗りつけて入るダイナーやモーテル。雑然としたオフィスで罵りあう上司と部下。捜査のなかでいつも訪れる場末の娼婦街や半裸の女性が踊るバー。
  
そこに漂う退廃的な雰囲気は、アメリカ社会の奥深い裏側を感じさせ、クリント・イーストウッド演じる主人公は、そんな社会で生きる大人の男の流儀を教えてくれたような気がします。彼の役どころは、いつも男の美学を貫き通すアメリカの良心のような存在でした。彼の出演作品でもっとも好きな映画のひとつサンダーボルトで、犯罪者の役を演じた時でさえそうでした。
 
クリント・イーストウッドの最新作グラントリノでは、彼の美学は極限まで研ぎ澄まされて私達に強烈なメッセージを訴えかけてきます。舞台はアメリカのデトロイト、昔気質の頑固さで息子や孫たちからは疎まれているクリント・イーストウッド演じる老人は、妻に先立たれ、フォード70年代の車グラントリノを眺めながら、夕暮れ時にひとりでビールを飲むような生活をしている。
 
そんな彼が、隣家の東南アジア少数民族出身の無職の青年と触れ合い、彼を一人前の男にしようとすることに、ちょっとした生き甲斐を感じ始める。そして、ある事件に巻き込まれていくなかで身をもって彼流の男の美学を教え込んでいく。そんな彼の生き様は、その青年だけでなく見ている私たちにも、男が持つべき究極の美学を教えてくれます。
 
もうすぐシルバーウィーク、秋の夜長にDVDで見るのに、おすすめの映画です。
 

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