MANELLIのトランク
トラベラーズノートがまだ発売前の5年前のこと。その発表も兼ねた展示会があり、ディスプレイに使う小物を探していました。そこで、こだわりグッズをたくさん所有しているTさんに声をかけてみました。
「寅さんが使うようなトランク持ってませんか?」
「ちょっと違うけど、昔蚤の市で買ったのがあるから持ってきてみるよ」
それが上の写真のトランクです。イメージ通りで、展示会で使わせていただいたのですが、なぜか、そのままずっとお借りして私が使わせてもらっているのです。大きさはちょうど寅さんが使っているトランクと同じくらい。カーキ色の樹脂でコーティングした布張りで、エッジは厚手の革で補強されています。MANELLIと革にブランド名が刻印されていますがネットで調べてもどんなブランドなのか分かりませんでした。真鍮の金具パーツの色の具合や、傷などから想定すると、かなり前にとても丁寧に作られたものだということが分かります。
電車や車でのちょっとした小旅行に行く時に便利で、手にした時の佇まいもとても気に入っています。
「男はつらいよ」を見て育った寅さんファンの私としては、こんな感じのトランクを手に旅をするのは、ずっと憧れのスタイルでした。寅さんみたいに、思い立ったその瞬間にトランクを手にしてふらりと旅に出る。これひとつあれば、いつでも旅に出る事ができる。そんな旅に憧れます。
たぶんイタリアあたりで作られて、私の知らない誰かと異国を旅して、今私の手元にある。カバンについた傷を眺めながら今までの旅路の歴史に思いを馳せ、これからまた私といろいろな場所を旅することを想像する。そんなことを考えていると、また旅に出たくなるのです。