2011年4月 4日

シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々


 
最近、本に向かう時間が多くなりました。テレビのスイッチをオフにして、ニール・ヤングやニック・ドレイク、ティム・バックリィなどのアコースティックな曲を小さな音でかける。そして、コーヒーを飲みながら、ゆっくりと本のページをめくる。
 
こんな時に読むのは、気持ちを前向きにさせてくれるような物語がいい。重々しくなくて、人と人の繋がりや夢を見ることの素晴らしさを教えてくれるような本がいい。例えば最近読んだ「シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々」もそんな本でした。
 
題名にあるシェイクスピア・アンド・カンパニー書店は、アメリカ人のジョン・ホィットマン氏によって営まれているパリに実在する書店です。英語書籍の専門店で、ウィリアム・バロウズやアレン・ギンズバーグ、ヘンリー・ミラーも通った伝説的な書店ですが、この本屋の大きな特徴は、書棚のあいだに狭苦しくて汚いベッドがいくつかあること。そして、世界中からパリを目指してやって来て、無一文になり行き場のなくなった若い書き手に店の手伝いをさせるかわりにそのベッドと最低限の食を提供しているのです。
 
「シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々」は、仕事を辞めて逃げるようにカナダからパリにやってきた著者が、この書店に居候をして暮らす日々を綴ったノンフィクションです。ちょっと偏屈で子供っぽいところもあるけど文学を愛し、人間愛に満ちたオーナー。彼は80歳を越えてまだなお、この書店をユートピアにして、そこから世界を変えていくと本気で信じています。さらに、20歳の女性に恋をしてしまうほどのロマンチスト。そして、彼の魅力と寝床に惹かれて集まってきた個性的な仲間たち。みんな必死にもがきながら、何かをつかもうとしている。たくさんの本と夢がつまった奇跡のような場所。ページをめくり読み進めていくと、どんどんあたらしい夢が膨らんでくる、そんな本です。