MADE OF STONE
ぼくは何かを白黒はっきりさせるのが苦手で、何が正しいとか、何が優れているというようなことはけっこう曖昧で、その時の気分や状況で揺れ動いてしまうようなものだと思ったりする。
正義だと思っていた人が、実は犯人だったりするのはアメリカの刑事映画でもよくあるし、もともとパンク好きだったせいか、みんなが正しいとか良いっていうものは、疑ってみるクセがあったりする。新聞やテレビなんて信じられないし、統計やマーケティングで、すべての動向が分かるほど世の中や人の心は単純じゃないって思ってしまう。
そんなひねくれもので優柔不断なぼくが、40年以上生きてきて、トラベラーズノートや、それを一緒に作った仲間、さらに使ってくれている方々から学んだのは、何かを決断したり、ものを作ったりする時の指針となるのは、やっぱり直感だとということ。そのせいで、失敗したり、もしかしたら大きな成功を逃していることもあるかもしれないけど、直感は自分の経験によって養われた感性から導き出される答えだから、それを信じていけば、自然と自分たちがいいなって思える方向に向かっていけるような気がする。
ストーン・ローゼズの20年ぶりの再結成を描いた映画「メイド・オブ・ストーン」を見た。ぼくは20年以上ローゼズの大ファンで、4人の個性がぶつかって生まれる魔法のようなグルーブは、ぼくにとっての理想的なバンドそのもので、音楽による高揚感だけでなく、生きていくための指針をも与えてくれている。
この映画が素晴らしいのは、監督をはじめとする作り手、数多く出演するファン、関係者、そして、メンバー自身からも、ローゼズへの限りない愛を感じること。うがった見方をすれば、再結成の裏には巨額のお金が動いているし、それによってお金儲けをしている人は、メンバーも含めてたくさんいる。この映画だって、そのひとつだって言う人もいるかもしれない。
だけど、彼らの音楽に心を動かされたことがある人なら、20年ぶりにスタジオにメンバーが集まって音を出す瞬間の映像を見たら、心がぐっと鷲掴みにされてしまうはずだし、解散後はじめてのライブが行われたシーンは、その場にいた観客同様、音が鳴った瞬間にもう涙があふれてくる。
その気持ちは、もう説明不可能で、彼らの歌詞のように「This is the one!(これだ!)」というゆるぎない直感にあふれている。
それが正しいのか、優れているのか、利益を生むのか、地球の環境のためにいいことなのか、そういうことはよくわからないけど、ただ、「これだ!」という瞬間をより多く、はっきり、強くつかみ取るために、ぼくらは何かを決断し、なにかを作り続けていきたい、そんな勇気をもらえた映画でした。
話は変わりますが、少し遅くなってしまいましたが、ポストカードキャンペーンの入賞者を発表いたしました。こちらを確認ください。今年も素敵な作品がたくさん集まりました!作品は今月下旬よりHPで掲載、及びトラベラーズファクトリー2階での展示を行います。賞品の発送も今月下旬頃になります。ぜひ、楽しみに
してください。
また、本日11月5日より17日まで今年も東京駅のエキュート東京に、トラベラーズファクトリーコーナーが登場します。ぜひ、遊びに来てください!