Have Yourself a Merry Little Christmas
まだ小さい頃、クリスマスは、サンタクロースが寝床にプレゼントを置いてくれる日だった。少し大きくなると、親からプレゼントをもらって家で骨付きの鳥のもも肉とケーキを食べる日になった。もっと大きくなると、プレゼントも貰えないし、特別な日なのにやることもなくて、なんだか寂しい気分になった。大人になると、ロマンチックな気分で恋人と過ごす日になった。だけど、世の中はバブルだったせいか、ちょっとそのことに強迫観念を感じていた。そして、恋人がいなくなると、仲間でバカ騒ぎをする日になった。それはそれでけっこう楽しかった。結婚して子供が産まれたら、自分がサンタクロースになる日になった。だけど、そのうちそんな役割は必要なくなって、ただプレゼントをあげる日になった。
トラベラーズファクトリーができたら、みんなのプレゼントになりそうなものを探したり、作ったりして店に並べ、さらにツリーを飾り付けたり、お気に入りのクリスマスソングを流してみたりする日になった。で、思ったのは、クリスマスもけっこういいもんだなあってこと。
例えば、こんなことを想像してみる。
クリスマスが近いある日、男性がひとり慌てた様子で店内に入り、ひと息付くと、店頭に並んでいたトラベラーズノートを手にして、さらに悩んだ様子でリフィールを選んでいる。その姿を見つけたスタッフは、さりげなく声をかける。
「こちらを付けると、便利に使えますよ」
「そうなんですか。でも使うのは女性なんです」
「その方は旅が好きなんですか?」
「年が明けると、長い旅に出てしまうんです。その旅に使ってもらえたらいいなと思って」
その瞬間にふと表れた悲しげな表情にはあえて触れず、スタッフは一緒に悩んでアドバイスをしながらリフィールを選んでくれた。
「クリスマスプレゼント用に包んでください。あと、コーヒーをお願いします」
「コーヒーが入りましたらお持ちしますので、2階でお待ちください」
彼は、2階に上がりTRUCKのソファに座ると、大きな仕事をやり遂げたように、ほっと胸をなでおろす。ちょうどコーヒーが届く頃、BGMはお気に入りのクリスマスソングに変わった。ふと思い立ち、スタッフにもらったメッセージカードを取り出し、ペンを手にテーブルに向かう。
「Have yourself a merry little Christmas.
Let your heart be light,
ささやかにクリスマスをお祝いしよう。
あなたの心に明りを灯せるといいな」
流れる曲の一節をカードに書き記し、最後に精一杯元気な字で、Have a nice trip! と結んで、プレゼントに添えた。少し冷めたコーヒーを飲みながら、切ないメロディーのクリスマスソングに耳を傾けた。そして、静かに歌詞を口ずさんだ。
「Through the years we all will be together
If Through the years we all will be together
If the fates allow
Hang a shining star upon the highest bough
And have yourself a merry little Christmas
ぼくらは、これからも一緒にいられるよ。
運命がそれを許してくれるならね...。
さあ、ツリーの上に星を取り付けて
ささやかにクリスマスをお祝いしよう」
もちろん、そんな場面を見かけた訳ではありませんが、クリスマスになるとそんな想像をしてしまうのです。
トラベラーズファクトリーでは、クリスマスにあわせて、さまざまなイベントを予定しています。例えば、tico moonのライブはそんなクリスマスの記憶を思い出したり、ロマンチックな空想をするのにぴったりの時間を与えてくれます。また、ギフトにおすすめの商品もご用意しています。ぜひ、遊びに来てください。