2021年8月23日

サウンドトラックを聴く

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それらしい気分がほとんどなかった夏休みが終わると、夏の日差しは少しずつ勢いを弱め、秋の気配が近づいているのを感じるようになった。毎年言っているような気がするけど、僕はこの夏から秋に変わる時期が苦手だ。
 
例えば夕暮れ時、ふと吹き抜けていく風にこれまでのむせ返るような生ぬるさが影をひそめ、ほのかに漂う冷気を感じるようになると、涼しい風を心地よく感じる以上に、物寂しく切ない気分がじわじわと心の中に広がってくる。そんなメランコリックな気分を紛らわすように、最近は映画のサウンドトラックをよく聴いている。
 
例えば『イージーライダー』のサウンドトラック。「ワイルドでいこう(Born To Be Wild)」を聴けば、近所を自転車で走っていても、ハーレーを転がして、アメリカの荒野を走っているような気分になれるし、最後のロジャー・マッギンの「イージーライダーのバラード」まで聴けば、自由を求めた旅の行く末までも追体験できる。感傷的になりやすいこの季節にぴったりの歌詞だ。
 
「川は流れていく。海に向かって流れていく
 川がどこへ流れようと、俺は共に流れていたい
 川は流れていく。流れる水で俺の汚れを洗い流し
 どこか他の街へと連れていってくれないか
 (イージーライダーのバラード)」
 
物哀しい夕暮れ時には、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』のサウンドトラックがいい。映画音楽の巨匠と呼ばれたモリコーネによる哀愁を感じるサントラを聴きながら、ロバート・デ・ニーロ扮するギャング、ヌードルスの波乱万丈な生涯に想いをはせると、自分の悩みなんてそれほど大したことがないように思えてくる。
 
家にいても、サウンドトラックを聴くだけで旅気分に浸るのことができる。『2001年宇宙の旅』の「美しく青きドナウ」を聴けば、パンナムの宇宙船を思い出すし、『スター・ウォーズ』のテーマソングを聴けばきっと誰もがスター・デストロイヤーが周りの戦闘機を蹴散らしながら、宇宙空間を進んでいくシーンが頭に浮かぶはずだ。
 
僕は『ダージリン急行』の影響で、キンクスの「This Time Tomorrow」を聴くと、インドの駅で電車に飛び乗るような気分になるし、『ライフ・アクアティック』の影響で、シガーロスの「Staralfur」を聴くと、潜水艦で深海を旅してジャガーザメに巡り合った気分になる。
 
さらにサウンドトラックは時間を超えた旅へと誘う。ベン・E・キングの「スタンド・バイ・ミー」を聴けば、少年時代の冒険気分を思い出すし、ビー・ジーズの「メロディ・フェア」を聴けば、幼い頃のほのかな恋心を思い出す。ルネサンス期のイタリア、三国志の時代の中国、西部開拓時代のアメリカに、戦国時代の日本、さらに未来へだって想像の旅をすることができる。
 
映画のサウンドトラックを聴くだけで、その映画のシーンが頭に浮かび、その時の感動や興奮、ときめきまでも心によみがえってくる。いつもだったら、夏から秋へと移り変わる季節は、イベントなどでバタバタと忙しくしたり、旅をしたりすることで憂鬱な気分で紛らわすのだけど、旅もイベントもできない今は、サウンドトラックで旅気分を感じるのもいいかもしれないな。
 
さて、先週インスタなどでお知らせしたように『トラベラーズノート オフィシャルガイド』が9月25日に発売になります。そのいきさつや詳しい内容のことは、後日ここでも書きたいと思うけど、書籍としては、初めてトラベラーズノートの本が出版されるということで、僕ら自身もワクワクしている。
 
たくさんの人の好きが詰まっていて、読んでいると幸せな気持ちになれる本になっていると思っているので、ぜひ楽しみにしていただけると嬉しいです。トラベラーズファクトリー店舗とオンラインショップでもこちらの本を販売しますが、ファクトリー限定のちょっとしたオマケもご用意しようと思っているので、あわせて楽しみにしていただけると嬉しいです。
 
また、今週水曜日、8月25日の夜に、トラベラーズファクトリースタッフによるインスタライブを開催します。今回は、現在店頭やオンラインショップで展開中の「フィルムカメラを楽しもう」をテーマに、カメラ好きスタッフが登場し、いろいろ語ってくれる予定です。
 
さらに木曜日、8月26日には、毎年恒例の2022年ダイアリーの情報を公式サイトにアップする予定です。こちらもぜひ!
 
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