先週火曜日。トラベラーズファクトリーエアポート再開の準備のために、久しぶりに成田空港を訪れた。チェックインカウンターには、ところどころで旅人たちが飛行機に乗るために並んでいる。2年前の臨時オープンで成田空港を訪れたときは、ゴーストタウンみたいに閑散としていたのだけど、あの頃よりは確実に賑わいが戻っていて、国際空港特有の旅情をかきたてる高揚感を少し感じることができた。

　ファクトリーに着くと、まずは長い休業の間に積もり積もったホコリをはたき、店内を掃除。それが終わると、修繕する必要がある場所や、足りないモノを確認しながら、棚やテーブルに商品を並べていった。何もなかった棚にだんだん商品が埋まっていく店内を眺めていると、やっぱり8年前のオープンのときのことを思い出してしまう。

　ちゃんと継続的に運営できるのか、お客さんが来てくれるのか、そもそも空港という公共の場所で、トラベラーズノートみたいなニッチで分かりづらい商品が売れるのか...。不安はたくさんあったけれど、それ以上に空港という場所にいるだけで気分は高揚していたし、そこにトラベラーズファクトリーができることで、これからどんな出会いがあるのかという期待の方が大きかった。

　オープンからずっとこの場所を見守ってくれていた店長と、ここでこれまで起こったエピソードをいくつか話して、いろいろあったねえ、としみじみした気分になった。そのうち、この3年間の休業と再オープンのことも、ひとつの特異なエピソードとして、しみじも語り合うようになるんだろうな。

　そんなわけでトラベラーズファクトリーエアポートの再オープンは2月中旬を予定していますが、まずは営業時間も短めで週休2日のスローペースで始めるように考えています。詳細は決まり次第、トラベラーズファクトリーのサイトやSNSでお知らせいたします。

　あの頃と同じように、不安はいっぱいあるけれど、やっとまた再開できる喜びと、これからどんな新しい出会いがあるのかという期待にも満ちています。ぜひ楽しみにしていただけると嬉しいです。

　先週金曜日。トラベラーズカンパニーサイトに「湯道」とのコラボレーション情報をアップ。こちらは、半年以上前に小山薫堂さんからお声がけいただき、銭湯や温泉が大好きな僕らも楽しみながら、彼のオフィスのスタッフととも温めてきた企画。3月には中目黒で展示イベントも予定しているのでこちらも楽しみにしていただけたら嬉しいです。

　サイトの更新を終えて、無事確認できると、早めに会社を出て東京ガーデンシアターへ向かう。昨年末にここで紹介したリナ・サワヤマがイギリスから来日していて、そのライブを観に行く。

　会場が暗転し、ステージから光が放たれ、歌声が聴こえた瞬間から、最後までずっと感動しっぱなしのライブだった。音楽をジャンルで語るのは意味がないと思うけれど、ギターとドラムが中心の想像以上にロックなサウンドだったのも嬉しかったし、前のブログでリンクを貼った2曲が続けて流れてきたときは、思わず涙がにじんだ。日本での公演ということで、宇多田ヒカルのカバーを歌ったり、シティポップ風なアレンジを加えた曲があったり、サービス精神も満載で、ひとつの空間に6000人が集まり、同じ時間を共有するライブならではの感動を久しぶりに味わった気がした。

　最後に演奏した「This Hell」という曲は、ある宗教では地獄に行くとまで言われてしまうLGBTQの人たちに対して、「そんな人たちがたくさんいるのなら、むしろ地獄は楽しい場所なんじゃないの？ だったら一緒に地獄に行こうよ！」という強い覚悟をポジティブなメッセージと共に歌っている。

　LGBTQに限らず、他の多くの人と考えや好みが違うことで、この世界に居心地の悪さを感じている人たちが一つの空間に集まり、「それでいいじゃん、あなたは間違ってないよ」とお互いを認め合えるような、そんな空間だった。

　やっぱり、ライブっていいな。いろいろな人にいろいろなことを言われるけど、自分たちが信じることや共感できること、心から好きで楽しめることに誠実に向かい合い、トラベラーズらしくやっていこうとあらめて思った。

　そして来週、久しぶりにタイのチェンマイに行ってきます。チェンマイに行くのは4年ぶりで、トラベラーズノートを発売して以来、こんなに長くチェンマイに行かなかったのは初めてのこと。その分いろいろやるべき課題はあるのだけど、それはそれとして、まずは久しぶりの海外で、4年ぶりのチェンマイを楽しみたいと思っている。

　エアポートもオープンし、大きな会場でのライブや、海外への旅を楽しんだりして、少しずつコロナ前の日常を取り戻していけるのは嬉しい。やっぱりトラベラーズとしては、デジタルでは代替えできない、リアルな人との出会いとか旅とかライブとか、そういうことを大切にしていきたいな。