2023年2月27日

Ko'da Style 25周年

 昨日まで中目黒でイベント「Choice」を開催してくれていたこうださんは、今年で25周年を迎える。10年ほどサラリーマンをしてから脱サラして、帆布バッグ職人として独立。その後25年間にわたってバッグを作り続けている。

 それだけでもう尊敬に値するのだけど、こうださんがさらにすごいのは、バッグのデザインからはじまり、職人として自らミシンで縫製をして仕上げて、お客さんに発送するまでをひとりで行っている。さらにイベントに出展してオーダーを受けたり、僕らとの注文のやりとりも全部ひとり。それを25年続けている。

 こうださんのバッグは、そのブランド名のとおり、Ko’da Styleとしか言いようがないオリジナルのスタイルが魅力だ。毎年新作を作るのだけど、そのスタイルはずっと変わらず一貫している。僕らとKo’da Styleが出会ったのはもう10年以上前だけど、そのときからこうださんらしい温かさと優しさを感じるバッグの印象は今と変わらないし、注文してから届くまで3ヶ月くらいの時間が必要だということも変わっていない。これを25年続けているというのは、本当にすごいことだと思う。

 トラベラーズノートは発売してから17年、トラベラーズファクトリーはオープンしてから11年になるのだけど、つくづく思うのは長く続けていくくことの難しさだ。17年も続けていると、当然その間には浮き沈みもあって、調子がいいときもあるし、悪いときもある。例えば、計画通りに売れなかったり、お客さんが少なくて大変な思いをしたこともあったし、逆に思った以上売れてしまい、みんなでバタバタしながら対応して、それでもお客様にご迷惑をおかけしてしまったこともある。

 できることなら、アップダウンが緩やかに続く道をマイペースでのんびり走りたいと思っているのだけど、なかなかそうはさせてくれない。急な長い坂道をへとへとになりながら自転車を押し歩き、なんとか登り切ったと思ったら、下り坂も急すぎてブレーキを効かせて緊張しながら滑降していく、なんてことがよくある。穏やかな登り坂であれば、自転車を降りることなく愚直にペダルを踏み続けていくことで登り切ることができるし、できればその後は、長いくて緩い下り坂を気持ち良い風を浴びながら、ペダルを漕がずにくだっていきたい。もしも良いことと悪いことの総量が決まっているのであれば、ブルーハーツの甲本ヒロトが歌うように、なるべく小さな幸せとなるべく小さな不幸せがなるべくいっぱいある方が良い。

 トラベラーズの世界を作り続けていこうと奮闘しながらも、思うようにいかない状況に振り回されてばかりで、続けていくことの苦労を身に染みて知っている僕らは、こうださんのようにひとつのことを一貫して25年続けてきたことに敬意を表さずにはいられない。もちろん、いつも笑顔で接してくれるその裏には、たくさんの苦労があるんだろうけど。

 スタッフの石井がKo’da Styleのバッグに興味を持って受注会を訪れたことからはじまったこうださんとの付き合いも、トラベラーズファクトリーのオープン以来なので11年以上になる。まずは、僕らが好きなバッグを皆さんに紹介したいとの思いでイベントを開催し、その後、トラベラーズノート用のバッグとしてコラボバージョンのトロールを作ったり、トロールバイキングを始めたり、京都でも開催したり、少しずつ新しい試みを加えながら、11年間途切れることなくイベントを開催してくれていることは僕らにとって嬉しいことだし、誇りでもある。ということで、こうださん、これからもよろしくお願いします!

 イベントの間、一緒に参加いただいているshort fingerのまみさんも加わり、こうださんの25周年を祝ってささやかな宴を開いた。すっかり酔っ払った僕らは調子に乗って「何周年まで続けるんですか」と聞くと、こうださんは「40周年でも50周年でも続けますよ。よぼよぼのおじいちゃんになっても、女の子から注文をもらったらバッグを作りますよ」なんてひょうひょうと笑顔で答えた。50周年の頃にはかなりの年齢になっているはずだけど、こうださんだったらあながちそれも不可能でもないのかもしれないと思った。よぼよぼのこうださんが笑顔でバッグを作っているのを想像して、ちょっと羨ましくなった。

 トラベラーズノートの50周年はどうなんだろう。あと33年。少なくとも僕自身は50周年迎える前に、その途中のきつい坂道で力尽きて倒れてしまうか、急な下り坂でハンドルを取られてころんでしまうか、タイヤがパンクして走行不能になってしまうだろうけど、まあ、それはそれでパンクロックな感じでいいのかもしれないな。

 話は変わりますが、先週末にサイトにアップしたように3月にトラベラーズカンパニーキャラバンの旅に出ます。今度の旅は、奈良-犬山-沼津の三都市です。その中で、犬山は僕らにとってはじめの場所になります。トラベラーズファクトリーでお付き合いさせてもらっているNAOTさんのお誘いでこの場所で開催することになりました。

 イベントで日本各地を旅しているこうださんに「犬山に行ったことありますか?」と尋ねてみた。

「犬山はいいところだよ〜。XXというレストランはきっと皆さん好きだと思うから、絶対行ったほうがいいですよ、あと犬山城からの眺めがほんとうに素敵なんです」といくつかのおすすめの場所を教えてくれた。それだけで頭の中に城下町、犬山のイメージがぼんやりと浮かんで、旅の高揚感に包まれてきた。

 奈良に行くのも久しぶりだし、2015年以来の2回目の開催となる沼津のweekend booksさんで、あの本が並ぶ素敵な空間でのノートバイキングも楽しみ。お近くの方はぜひ遊びにきてください。