2024年7月16日

持ち物はスーツケースひとつに収まるくらいにしたい

 週末、靴の底を貼り替えてもらうために、近所の修理屋さんに行った。2足で1万9千円とちょっと。正直、ずいぶん高いとは思ったけど、生活のための必要経費だと割り切って支払った。

 ここ15年くらいは、年に1、2回、結婚式とか会社の行事でスーツを着なければいけないとき以外は、毎日同じ靴を履いている。同じ靴と言っても色違いで3足持っているので、それらをローテーションで繰り返して履く。革靴だけど、濡れるのは気にしないで雨の日も履く。仕事のときも旅に出るときも、近所のコンビニに行くときも自転車に乗るときも同じ靴を履く。そうすると、だいたい2年くらいで底がすり減って履きづらくなるので、張り替えてもらってまた履き続ける。

 この靴は、ニューヨーク郊外の湖畔の村で作られているそうで、那須を旅しているときに立ち寄ったお店で出会った。トラベラーズノートに似ている革の風合いにシンプルなデザインが気に入って、一目惚れのように手に入れた。

 紐がないから、手を使わずサンダルみたいに気楽に履くことができるし、素足で履いても心地よい。だけど革靴だし、ちゃんと踵があるから会社でもそれほど違和感はない。なにより長く履き続けることで、足の形にぴったりフィットしてくるから、履いていてストレスがない。それからは同じ靴を何度か買い足すほど気に入った。

 そういうものが見つかってしまうと、他の靴に食指が動かなくなる。それはそれで新鮮な気持ちが味わえないかというとそうでもない。修理後の真新しい靴底がついた靴に足を入れると、まるで新品を履くときのような気分になれる。

 似たようなものだと、ここ5年くらいジーパンは国産の同じ銘柄のものを履いている。以前はずっとリーバイスを履いていた。でも自転車に乗るようになると、すぐにお尻の部分が擦れて破れてしまって、ちょっとした不満を抱いていた。あるとき、台湾でセレクトショップの方からある日本のジーパンを教えてもらった。それは、ゴツく強靭なのがテーマで、履いてみるとなるほど簡単には破れない。以来ジーパンはずっと同じものを買っている。

 トラベラーズファクトリーができてからは、バッグはシュペリオール・レイバーかKo'da Style、TO&FROのどれかを用途で使い分けている。それ以外にもノートにまつわる道具は、たいていトラベラーズファクトリーで手に入れることができる。

 自分の中で、「これだ!」といえる道具や日用品を見つけると嬉しい。買い物で悩むこともなくなるし、ストレスが減って、日々の暮らしが心地よくなる。僕にとって、その際たるものはもちろんトラベラーズノートになる。トラベラーズノートを使うようになり、ノートやダイアリーをどれにするかという悩みが減っただけでない。例えば、このノートを使うことで、1週間に1度、絵を描くようになった。絵を描くことをルーティンのように繰り返すことで、生活が豊かになり、ストレスも減ったような気がする。

 トラベラーズバイクと出会うことで、自転車に乗ることがより楽しくなった。自転車と過ごす時間が増えたし、自転車で会社まで通勤するという新しい習慣を与えてくれた。さらにそのことが、これまで気づかなかった東京の風景の美しさを教え、日常の中に心地よい時間を与えてくれた。最近は夜、自転車での帰り道に、コンビニで買った冷たいスムージーを飲みながら公園で休むのをささやかな日々の楽しみにしている。そんな日々のささやかな楽しみを教えてくれたのは、トラベラーズバイクだと言える。

 55年生きてきた僕にとって、歳をとるということは、自分にとっての究極のお気に入りのものを見つけることでもあるかもしれないとすら思える。自分の価値観やライフスタイルにぴったりフィットして、心地よく過ごせる道具が見つかれば、世間の評判とか、流行り廃りを気にすることもなくなるし、飽きることもない。その分無駄なものは必要なくなり、身の回り荷物は少なくて済む。そんなことを言いながらも、たくさんの本に書き終わったノート、それに膨大な紙ものがたまってしまうのが悩みのタネではあるんだけど。

 もう欲しいものもあまりないし、自分が必要で使いやすく、心地よい道具だけに囲まれて暮らせたらいいなと思う。スーツケース1個に収まるくらいの物量で、なにかあればぷいっと旅に出られる。そんな暮らしに憧れる。

 旅をしながら暮らして、仕事も旅先で行う。暑い夏には北海道、冬になったら沖縄と日本中を車で移動して、車で寝られたらホテル代もかからない。朝は、海でも眺めながら自分で豆を挽いて淹れたコーヒーを飲み、昼は仕事をする。夜は街の銭湯に入って、その近くの中華屋や居酒屋で軽く済ます。その土地が舞台の小説なんかを読んで寝る。ずっとそればっかりだと寂しいかもしれないけど、1年の半分くらいなら、そんな暮らしもいいかもしれないな。