2008年1月16日

TRAVELER'S books オートバイの旅

少年の頃、自転車に乗りこなせるようになったことで、急に世界が広がったような気がしたのを覚えています。道路はどこまでも繋がっていて、その先には未知の世界が待っていました。
 
オートバイの旅もまた、その頃の気持ちを思い出させてくれます。リアシートに一人用のテントと寝袋を積んで、近所の街を抜けると、気分は少年の頃の未知の世界を自転車で走ったあのわくわくした気分に戻ります。その時、僕はどこにでも行きたいところに向かって行くことができて、どこでも泊まることができるのです。
 
オートバイの旅はちょっと特別です。体中に外気を浴びて走るため、冷たい雨や暑い日差しに直接さらされることになります。また、バイクを走らせるという事は、基本的に他の人とのコミュニケーションから遮断される孤独な作業です。それがゆえに、普段見つめ合うことを忘れがちな、風や自然、そして自分自身との対話をすることを思い出させてくれるのです。そんなオートバイの旅の魅力を感じさせてくれる本を。
 
 
「禅とオートバイ修理技術」ロバート・M・パーシグ著
 
著者である元教授が息子を後ろに載せて、友人とバイクで旅をする話です。ただし、著者はかつて精神病治療のための電気ショック療法である記憶を失い、その息子も神経症のきざしが出てきている。そんななかで、バイクでの旅をしながら、哲学的な精神の世界を旅していく。旅の間、バイクはメンテナンスされ、精神も本来の姿を取り戻していく。バイクの旅と哲学の旅、この2つの旅が交互に書かれていて、正直言うと哲学の部分はあまり理解できませんが、バイク乗りにとって、バイクに乗ることは自分自身に向かう最良の時間であり、それを深く追求していくことは意味があります。
 
 
「風と旅とオートバイ」 斉藤純著
 
エコロジストでバイク、自転車、音楽への造詣が深い斉藤氏はバイクと旅をテーマにした本を何冊か書いています。その中から1冊。『オーバイ乗りは自ら風を起こして、風景のなかを走り抜けていく。』そんな素敵なシーンがたくさん出てくる短編集です。ミステリー的なしかけもあり、一気に楽しく読む事ができます。彼の小説を読むと、旅に出たくなるのはもちろん、音楽や本、映画や絵に向かいたくなります。
 
 
「熊を放つ」ジョン・アーヴィング著
 
ウィーンで出会った若者2人が中古のロイヤル・エンフィールドに乗って旅をします。オーストリアの田舎の美しい風景、そしてそこでの出会い。若い時代の純粋さ、そして痛々しい衝動を瑞々しく描いている小説です。ジョン・アーヴィングの初の長編で、村上春樹氏の翻訳です。
 
 
「俺様の宝石さ」浮谷東次郎著
 
23歳の若さで事故死したレーシングドライバーの著者が、18歳の時に単身アメリカへ向かって、生活する姿を日記や手紙で綴った本。1960年、まだ準占領下の時代の日本なか日本を飛び出し、バイクを駆ってアメリカを放浪する姿は、眩しく読者を鼓舞します。