2009年9月25日

1Q84


 
村上春樹氏の小説を初めて読んだのは大学生の頃。当時、ノルウェイの森が大ベストセラーで、正直言うと、そのあまりの人気と、おしゃれなイメージに食わず嫌いをしていました。しかし、大学のゼミでその小説をテーマにディベートをすることになって、読み始めるととても面白く、それまで書かれた小説をすべて読み終わるまでそれほど時間がかかりませんでした。
 
初期の作品に漂う空虚で乾いたライフスタイル、クールに悲劇や不条理に立ち向かい、それを受け入れていく姿は、そこに暗示された意味を理解していなくても、ただ単純に物語として面白く読むことができました。
 
しかし、彼が僕たちの世代に教えてくれたのは、アルデンテに茹でたスパゲティの美味しさや、ビル・エヴァンスのワルツ・フォー・デビイが月夜に似合うことだけでなく、物事の表面的な見え方を疑い、自らの価値観を形成していくことの大切さでした。(もちろんアルデンテもビル・エヴァンスも大切なことですが... )
 
ちなみに、ビートルズのノルウェーの森ですが、中学時代、Nowhere Man(ひとりぼっちのあいつ)の方をノルウェーの森だと思っていました。どちらの曲も、ラバーソウルに入っているのですが、「Nowhere Man, don't worry」というフレーズがノルウェーのも~り~って聴こえるんですよね。
 
今更ですが、1Q84です。なんとなく発売してすぐに手に取る気にはならず、手元にある未読の本を片付けてから読もうと思っていたのですが、未読の本は増えるばかりでいっこうに片付きません。ブックオフでBOOK1を見付けたのを機に、いっきに読んでしまいました。
 
もちろん、とても面白く読むことができました。権力、宗教や世の中の風評、さらに自らの弱さなど知らず知らずに僕達を束縛しようとしている様々な事に立ち向かっていく宣言のような小説です。
 
私達は自由を求めていくと、それを妨げるものと対峙したとき、新たな不自由に縛られてしまう。その時に、不自由を受け入れてでも、自ら求める自由を選んでいく強い意志を持つこと。

きっと読む人によってこの小説から感じ取れるメッセージは違うのだと思いますが、私はそんなメッセージを感じました。
 

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