2009年9月11日

恋する香港

<
 
中国の工場で仕事を終えたあと、香港へ向かう。船、電車、バス、車など、その時によって交通手段は違いますが、国境を越えて香港の街中に入り九龍の中心を通るネイザンストリートまで来ると、自然と胸が高鳴ってきます。
 
古い崩れかけた建物と新しいスタイリッシュなビルや格調高い高級ホテルが混在するメインストリート、道の半ばまで突き出しているネオンの光る看板群をくぐり抜けて2階建てバスが走っていきます。
 
上半身裸で街を闊歩する男、暑いのにビシッとスーツを着こなすビジネスマン、軒先で佇むリタイアしてからかなり年月が経った老人、めかしこんで街にくりだす若者達、すべての人達が違和感なく同じ場所に溶け込んでいます。
 
政治的に複雑な歴史を辿って来たがゆえに、他の都市にはない独特の混沌とした雰囲気を持っています。この場所の魅力は、あらゆる階層や人種、文化を飲み込んでしまう懐の深さと、そこに漂う自由な空気。
 
香港を初めて訪ねたのは、18年前の学生時代。イスタンブールに行く時に、この街でトランジットする必要があり、ならばと2泊することにしたのが最初の訪問。この時は、ビル群すれすれに飛行機が滑降することで有名な啓徳空港からの入国でした。ガイドブックも持たず、安ホテルがあるという重慶大厦に向かい、ビルの前に立つ客引きに導かれてその日の宿を決めました。その後、何度もこの街に足を運びましたが、その度にその魅力に引き込まれていきました。
 
なんだかこの感じ、まるで恋のようなのです。会えると思うと、心がときめき、会った瞬間に胸がワクワクする。そして、会うたびに新しい魅力を発見し、ますます好きになり、そうなってしまうと欠点さえも魅力と思えてしまう。
 
夜のスターフェリーに乗り、心地よい風に吹かれて美しい夜景を眺めていると、香港を舞台にした映画「恋する惑星」で流れる歌フェイ・ウォンの「夢中人」が、頭の中で鳴りはじめました(クランベリーズ「Dreams」のカバー曲)。そんな時は、恋したようなロマンチックな気分。まさに、夢中人なのです。