活版印刷工場
今年3月青山スパイラルイベント時のオリジナルポストカードを印刷していただいた活版工場が、諸事情によりその工場を閉めてしまうことになってしまいました。写真は、その工場からいただいた活字を使って、トラベラーズノートにスタンプしてみたもの。
活版印刷は、最近さまざまなデザイナーによってアナログな風合いを活かしたプロダクトや作品が生み出され、注目されています。私たちもポストカードを作った時、オフセット印刷にはない活版印刷特有のちょっとしたにじみやカスレ、版を押した跡にとても感激しました。
しかし、注目されている一方で、活版印刷が廃れていく流れを止めようもないのもまた事実のようです。主流がオフセット印刷に移り変わってからも小ロットの名刺やハガキの印刷で必要とされてきた活版印刷ですが、近年オンデマンド印刷などデジタル印刷が安価になり、活躍の場が一気に減ってしまいました。
なにしろ活字を組んで版を作るというのは、途方もなく手間のかかることですし、それがレイアウト上さまざまな制限となってしまうのも事実。そもそも私たちが感激した文字のカスレやにじみなどは、印刷の基本的な品質基準から見れば、デメリットでしかない場合がほとんどなのです。
それでも、活版印刷には他にない手作りの味わいや文化的な価値があります。失ってしまっては、もう2度と再生できないものなのです。閉めてしまった工場もきっと苦渋の選択だったのだと思います。私たちも活版印刷を次の世代に残すために微力ながらも何か出来ることはないかと考えなければならないのかもしれません。
工場から使うあてはないのですが、アルファベットの活字を頂きました。長い年月を経て使われた道具は、それだけで価値があり美しいと思いませんか?