2010年4月19日

夏への扉


 
ずっと昔から、自分自身に言い聞かせていることがあります。それは過去より現在の方が良くなっているということ。
 
今思い出しても少年時代は決して気楽で楽しいだけのものではなかったし、それよりも、小さなことで不安になったり、うまく自分を表現できなくて悩むことが多かったような気がします。大人になるに従って、自分が少しずつ確立されることで、自分を認められるようになりました。大学時代、楽しい思い出はたくさんあります。でも反面、それを突き詰めることで見えてくる何かを確実に捉えることが出来ず、悶々としていた日々も多かったような気がします。
 
仕事を始めてからも同じ。自分が成長していくことで、できることの範囲が増えて、より自由に自分がやりたいことができるようになってくるのだと思います。もちろん、その過程で浮き沈みはあるのですが、でも大きな流れで考えてみると、昨日よりも今日の方がいい日である。そう考えるようにしています。
 
最近新訳が出たロバート・A・ハインラインの「夏への扉」を再読してみました。タイムトラベルもののSFですので、旅の本として読む事もできるかもしれません。
 
SFで書かれる近未来は、「すばらしい新世界」や「1984年」のような、全体主義的で抑圧されたどちらかというと居心地の悪い世界が多いのですが、この小説には、未来への希望が書かれています。でも、それは、その時代が希望に溢れた未来だ、ということではなく、希望を持って前向きに生きて行くことで、未来はより良いものになるという力強いメッセージ。
 
1956年に発表されたこの小説で、未来として描かれているのは、2000年のアメリカ。2010年の今でも、この小説の2000年のように風邪が一掃されていないし、重力消去機もロング・スリープも実現していません。
 
それでも、この主人公だったら、私たちが生きている2010年にやってきたとしても、きっと大きな希望に溢れた時代として捉えて、インターネットや携帯電話に触れていると思います。
 
今日は、昨日よりずっといい日になる。もちろん、そう思えないような時もあります。昨日の喜びが、今日には悲しみでしかない時もあります。でも、その喜びも悲しみも全部受け入れて、未来への糧にして、希望を持って生きることできっともっと良い明日がやってくる。凍てついた世界から、明るい光が差し込む世界へ通じる「夏への扉」を見つけることができる。
 
この本は、そんな未来への希望を持つことの大切さを教えてくれます。