2010年7月23日

Pictures from the surface of the earth


 
だいぶ日が経ってしまいましたが、ISOT(国際文具紙製品展)とあわせて開催された東京国際ブックフェアに今年も行って来ました。出版社のブースは、どうも今ひとつ盛り上がりに欠けていたのですが、変わって人が集っていたのは電子書籍のブース。
 
アマゾンのキンドルに続き、iPadの出現で一気に電子書籍が盛り上がっているようで、ポータルサイトや新サービスをアピールする会社のブースをたくさん見つけることができました。同時に、その直前にHMV渋谷店が閉店するなんてニュースもあって、書店や出版社の危機感をあおっているようです。
  
いずれにしてもiPadなどの端末が普及するにつれて、出版のデジタル化が加速していくのは間違いないと思います。でも、やっぱり音楽と違い、手で直接触れて五感を使って向き合う本は、すべてがデジタルに変わってしまうことはないような気がします。
 
デジタルカメラの出現によって、トイカメラなどの味のあるアナログカメラが逆に注目されたように、活版印刷やシルク印刷、箔押しなどの古くからある質感のある印刷加工が、ますます注目されるようになるのでしょうね。デジタル化の加速によって、アナログがその価値を見つめ直し、より研ぎすまされていくことは悪いことでないような気もします。
 
毎回、このブックフェアで楽しみなのは、洋書セール。今回ゲットしたのは、写真集「Pictures from the surface of the earth 」。「パリ、テキサス」「ベルリン・天使の詩」「ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ」などで知られるヴィム・ヴェンダース監督の写真集です。
 
アメリカ南部の乾いた風景に停まる色鮮やかなバスが写っている写真はパリ・テキサスを、ハバナの古い建物が路地裏で子供がバットを振る写真は、ブエナ・ビスタのワンシーンを切り取ったかのようです。美しく哀愁をおびた物語を予感させてくれる、とても素晴らしい写真集です。
 
はじめて見たのに、とても懐かしく切ない気持ちになるのは、ずっと会いたかった風景だからなのかもしれません。この風景を自分の目で見るために旅に出たくなる。そんな写真集です。どんなにデジタルやバーチャルの世界が進んでも、リアルにその場所に向き合って体感することでしか分からないことは、まだまだたくさんあるから私たちには旅が必要なんでしょうね。
 

 

 

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