ブルックリン橋と両国橋
ブルックリン生まれのアメリカの作家ピート・ハミル氏は、ブルックリンは都市を俯瞰することができる街であると語っています。ブルックリンは、ニューヨークの中心地マンハッタン島からイーストリバーは挟んだ対岸にあります。その両岸を結ぶブルックリン
ブリッジは、ブルックリン側の人から見ると"アウトサイドイン"、外側から内側へと繋ぐつぎ目のような意味を持っているそうです。
東京の東側の外れ墨田区で生まれ育った私にとってイーストリバーを隅田川に置き換えてみると、その意味が腑に落ちてきます。そうすると、ブルックリンブリッジはさしずめ両国橋にでもなるのでしょうか。東京では、新しいコトは常に隅田川の西側で起こってきました。私自身も自転車で川を越えることで、新しい文化に触れてきたような気がします。
初めて自分でレコードを買ったのは、まだ電気街だった頃の秋葉原。その先の神保町はたくさんの本との出会いを与えてくれたし、
中学生になると、銀座まで自転車を走らせて映画を見に行きました。もう少し成長してから知ったカウンターカルチャーの中心地は、さらに西に進んだ新宿や渋谷からもう少し先の場所。胸をわくわくさせるような文化的な発見は常に隅田川の向こう側にあり、橋を渡り西に行動範囲を広げることから始まったような気がします。でも、最後に帰ってくるのは川の東側。
内側のすぐ目の前にありながら、決して注目されることがない。私が生まれた街はまさに東京を俯瞰できる場所なのかもしれません。そんなこのエリアに世界一のタワーができて今まで経験したことがない注目をあびています。下町の雰囲気にそぐわない無機質なタワーは突然空から落ちて来た宇宙船のような違和感と威圧感を感じさせます。
スカイツリーが完成することで、街がどのように変わっていくのかは、まだ分かりません。ただ、タワーが高い場所から街を見下ろし俯瞰できる場所でもあると考えると、この場所に作られたことも意味があるのかもしれません。