2011年3月11日

それぞれの個性


 
トラベラーズノートは、1冊として同じものはありません。それぞれの人の手にわたって、カスタマイズされたり、革が経年変化したり、何かがそこに記されたりすることによって、様々な変化が生まれるからということもあります。でも、それ以前の人の手に渡る前のトラベラーズノートも厳密に言うと一つずつ異なります。
 
生き物を原料にしている革は当然一枚一枚個体差があります。その一枚も場所によって質感が異なります。紙やビニールのように寸法や質感が一定でない革は、その一枚から表情や傷を見極めながら、最適な部分を丁寧にカットしなければなりません。
 
トラベラーズノートの革は、植物性タンニンでなめし、革本来の風合いを出すために過剰な表面加工をしていません。その分、革の個性が分かりやすくなります。タイから届いたたくさんのトラベラーズノートの革を見比べてみると、例えば、その表面の色固さ、厚さ、質感はそれぞれ微妙に異なります。もちろん、その中で一定の基準を持って、検査を行うのですが、それぞれ個性があることも認めながら製品にしていきます。
 
例えば、ラグジュアリーブランドのバッグは、コストに反映させながら厳密に一定化するようにその革を選ぶのかもしれません。逆に革本来の表情が見えなくなるくらい加工をすることでムラのない製品を作ることもできます。
 
でもトラベラーズノートは、ハレの日にだけ使うような高級品ではなく、それぞれの日常に寄り添いながら、その人の生活に温もりや高揚感を与えるようなモノでありたいと思っています。そして同時に、素材本来の質感や表情が楽しめて、使うほどに美しく経年変化するものでありたいと考えています。それは、それぞれの個性を認めてもらうことで成り立つことでもあります。

自分と同じ人間は他にどこにもいないのと同じように、自分のトラベラーズノートとまったく同じトラベラーズノートはこの世に存在しません。そして、使うほどに、その使い手の個性が反映し、さらに変化していきます。
 
5周年という節目の年、記念アイテムにキャメルカラーを選んだのは、個体差や変化がより分かりやすいというのがその理由です。その個性を楽しんでいただけると嬉しいです。
 

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