桜前線と田園風景
東京では、朝晩の冷え込みもだいぶおさまり1年でもっとも穏やかな季節になりました。桜前線は、もう北東北まで到達したようです。
東北地方を営業でまわっていた頃、仙台から青森まで桜前線が到達するまで2週間ほどギャップがあり、ずいぶん長い間桜を見ることができて、得をした気分になっていたのを思い出します。仙台では、4月の中旬頃に満開になりますが、桜の名所、弘前公園ではゴールデンウィークがいちばん美しい季節です。
そしてゴールデンウィークが過ぎる頃、仙台では田植えの時期がやってきます。東北の農家の人達にとっては、田植えと稲刈りは一大イベント。当時は青森の取引先ではシーズンになると田植え休暇をとる人が何人もいて、数日休んで田植えを手伝っていました。
田植えの時期になると、田んぼに水をいれる代かきという作業が行われます。今まで土が見えていた田んぼに水がはいると太陽の光が反射し、風が吹くと規則正しく並ぶ青い苗とともに揺れてきらきら美しく光ります。そんな光景を眺めていると初夏の訪れを実感できます。東南アジアの田園風景を見たあとに日本の田んぼを見てみると、いかに日本の稲作が繊細で丁寧に行われているかが分かります。
今回の地震で大きな被害があった仙台空港のあたりも、周囲は田んぼが広がっていました。いままで当たり前のように見ることができた田園風景も、津波被害があった場所では、農地流出、水没、さらに塩害などの土壌被害でしばらく作付けができないそうです。
お米が私たちの生活にとって欠かせないものであるように、日本のほとんどの場所で市街地を離れると見ることができる田園風景もまた私たちの生活に欠かせないもの。
季節が変わるごとに今まで当たり前のようにあったものを失われた人達がいることを考えさせられます。