湾岸トリップ
夜の湾岸エリア。真新しい道路と柵に囲われた空き地。人気のない無機質な街並に、威圧的にそびえ立つタワーマンション。節電のためなのか少し控えめのオレンジ色の街灯と雨上がりのおぼろ月が妖しげな雰囲気を醸し出している。無数の窓明かりを灯すタワーマンションは、地球から遠く離れた銀河を漂う宇宙船のよう。
先に進むと近未来的な建造物の焼却場があった。その中には、夜間のため入り口を塞がれた遊歩道が誂えてあるけど、きっと昼間もここを歩く人はだれもいないんだろうなあ。
ふと手塚治虫の「火の鳥」で描かれた未来の地球を思い出す。地上には人は住めなくなって、人類は地下都市にコンピューターに支配されながら暮らしている。そして、その地下都市も戦争で滅びてしまい一人生き残った男が孤独のなかで生き続ける。そんな話だった。
車がいっさい通らない広い道路のわきには、大型トラックが何台も止まって休んでいる。荷台には、和歌山に鹿児島など日本全国の地方都市の名前を見つけることができる。しかし、そこにも人の気配を感じることはできない。ここには他に誰もいないのか?どこかの異空間を旅する旅人のような気分。僕らはどこから来て、どこへ行くのだろうか?
さらに歩くと、海につながる運河が見えてきた。運河には、サンダーバードに出てきそうな乗り物が止まっている。これに乗り込んだらどこに行けるのかな。出来れば、暖かくて明るい場所がいいなあ。いろいろ不安もあるけど、明るい未来に連れて行ってほしいな。
42回目の新しい旅は、こんな妄想とともに始まった。