2011年7月25日

一杯の珈琲から


 
旅先で飲むコーヒーが好き。旅の途中、感じの良いカフェでコーヒーを飲んでいると、旅気分で浮き足立つ心を落ち着かせてくれる。そして、旅のなかにゆっくりと過ごす時間を持つことでもっと旅が充実するということを教えてくれる。そこが異国なら、カフェに出入りしたり、前の道を歩く人々を眺めているのも楽しい。ちょっとしたことをきっかけに、見知らぬ異国の人とのコミュニケーションが生まれたりすることもあります。
 
ずっと前に、題名に惹かれて購入してそのままになっていたケストナーの「一杯の珈琲から」を本棚からひっぱり出して読んでみたのは、カフェについて考えていたから。時は1937年。夏の休暇を過ごすため、オーストリアのザルツブルグを旅したドイツ人のお話です。
 
主人公は、お金持ちなのに為替管理の制約から、オーストリア通貨を充分手に入れることができず、ザルツブルグに隣接したドイツの街に宿をとり、そこから毎日国境を越えて通い、金銭的にはオーストリア側に住む友人を頼りに旅をするという方法を選びます。この小説は、その旅行中に書かれた日記という形式で綴られています。
 
あるとき、カフェで珈琲を飲みながら友人を待っていましたが、いっこうに友人は現れず珈琲の支払いに困った末に、居合わせた女性に助けを求める・・・。それをきっかけに恋が始まります。
 
正直に言うと、予定調和の他愛ないストーリー展開なのですが、著者の軽妙洒脱な文章で描かれた当時のザルツブルグの様子と、ほのぼのとする恋愛模様がとてもステキで、そこを旅しているような気分に浸れます。確かに、旅先のカフェには、そんな何かが起こりそうな予感を感じをさせてる魅力があるのかもしれません。
 

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