2011年8月 5日

Goodbye


 
音楽評論家、俳優、ミュージシャン、SF作家、元メジャーリーガー、そして、現役サッカー選手、最近訃報が続きます。著名人の訃報は、悲しみよりも驚きを与えることが多いですが、その人が与えてくれた心の影響の大きさによって悲しみの割合が大きくなります。
 
思い返してみると、著名人の訃報を聞いて、思わず涙が出てきたことが今まで2回あります。ひとつは、2002年12月、イギリスのバンド、ザ・クラッシュのジョー・ストラマーが亡くなった時。クラッシュは、自分の心にもっとも大きな影響を与えてくれたバンドのひとつ。ちょうどその1ヶ月前にバンド仲間だった友人が病気で亡くなったあとだったこともあり、ニュースを聞いた瞬間、友人とお互い好きだったクラッシュの曲をコピーした記憶が蘇り、自然と涙が出てきました。
 
もうひとつは、1996年のちょうど今頃の季節。秋田出張中、八郎潟のまっすぐ続く道を営業車で走りながら聞いていたラジオのニュースで寅さんこと渥美清氏の訃報を知ったときです。
 
映画「男はつらいよ」は、小さい頃からテレビで放映すると家族で必ず見ていたし、大人になってからもしばしば最新作を映画館で見るくらい好きでした。少年時代の自分にとって、フーテンの旅ぐらしのテキヤ稼業はまさに憧れの職業でした。また、寅さんの甥っ子の満男は、設定が自分と同年代で、その優柔不断な情けない性格も自分に重なるところがあったりして、感情移入がしやすく、寅さんはずっと昔から身近にいた、伯父さんのように感じていたのかもしれません。
 
訃報のニュースを聞きながら、その年の正月に映画館で見た「男はつらいよ・48作目」の最終シーンが蘇ってきました。必ず寅さん失恋をして終るのがお約束ですが、遺作となってしまったその作品のラストは、いつもとはちょっと違っていました。マドンナは今まで何度か登場している浅丘ルリ子演じるリリー。柴又でみんなで談笑中に寅さんとリリーが言い争いになって、怒ったリリーが家を飛び出す。ひとりタクシーに乗ろうとした瞬間寅さんがやってきて、そこに乗り込んで、2人一緒に旅立っていく。そんな終り方でした。
 
せっかく幸せになれたと思ったのに・・・と満男の視点で、伯父さんを失った悲しさ。そして、もう大好きな映画の続きが見れないという、ファンとしての寂しさ。その両方の想いがこみ上げて思わず涙をあふれてきたのかもしれません。
 
当たり前の話ですが、大切に思っている人の突然の死に直面すると、大きな喪失感と深い悲しみを感じます。それは身近な人であっても遠い存在であっても同じなのかもしれません。最初に挙げた方々のご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申しあげます。
 

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