2011年8月 1日

The Times They Are a-Changin'


 
雑誌「ぴあ」がついに廃刊になりました。インターネットや携帯、スマートフォンの普及で情報誌としての必要性がなくなってしまったのが廃刊の理由のようですが、かつてお世話になった雑誌がなくなるのはちょっと寂しいです。
 
映画に行くときは、必ず「ぴあ」で時間をチェックしていたし、ミニシアターやマイナーなライブハウスの地図やタイムテーブルもきちんと掲載されていて、インターネットが普及する前はとても貴重な情報源でした。
 
バンドをやっていた学生時代、下北沢にあるライブハウス「屋根裏」でライブをやることが決まると、わくわくしながら「ぴあ」を買いに行きました。スケジュール欄に、出演バンド名が掲載されるのです。小さな文字ですが、自分たちのバンド名が印刷されているのを見て、とても感動したのを覚えています。

「ぴあ」はマス雑誌でありながらメジャーとかマイナーに関わらず、少数の人たちにしか必要がない情報もきちんと掲載していて、その姿勢が革新的でした。インターネットの普及で、もっと幅広く簡単にニッチな情報を発信できるようになりましたが、素人のバンドがはじめて「ぴあ」で自分たちの名前を見たときのような感動はないんだろうな、と思います。
 
情報の検索性や量はデジタルの方が圧倒的に便利ですが、情報に向かう時の質感や感覚には、アナログにしかできない表現がたくさんあります。例えば、ノートに向かい合って紙の触感や匂いを感じながら何かを書くこともアナログならではの味わい。さらに、アナログにアウトプットされた情報は、時代とともに変化していきます。黄ばんだ雑誌やノート、色あせた写真を見て、その時代の移り変わりを感じることは、デジタルにはできません。
 
PCの中に記録された画像は、何十年たっても何も変わらないけれど、アナログの写真は、空気、湿気や光、匂い、触ったときの手の脂、環境によって変化し、あらたな情報がそこに加わっていきます。人間の記憶と同じように、時を経るごとに変化していくのです。 もちろん、それは欠点でもあるのですが、そんなアナログの特徴が最近とても愛おしく感じたりします。
 
写真は、ブックフェアで手に入れた60年代に製作された地図や雑誌。紙の質感、活字や印刷の風合いがその時代の息づかいを感じさせてくれます。