ひとり歩けば
イベント明けの何も予定がない休日。日々の疲れがたまっているのと、寒さで何もする気にならず、本を読んだり、音楽を聴きながらだらだらと過ごす。冬の冷気を遮断した暖かいマンションの部屋で、読んでいるのは辻まこと氏著の「ひとり歩けば」。山の暮らしや情景が、美しく詩的でちょっとだけシニカルな文章で綴られています。
「山の中のどこかで帽子をとって、あまり激しくない風の流れに会ったとき、君はどんな感じがしますか。私はいつも山の風の中に、彼らの経験してきた旅の話を聴きます。谷間の陽かげにわく小さな泉の話、そのそばの苔の香り、乗越しの荒れた石屑の話、しばらく運んだ渡り鳥の群のこと、話を聴くばかりでなく、ときには頼んで私の心を乗せてもらいます。」
こんな文章に出会うと、冬の山に流れる冷たい風が恋しくなってきました。例えば、一面雪で覆われた山道を車で走り、ふと雲が切れて青い空が現れてくる。車をとめて外に出ると、おだやかだけどきんと冷えた風を感じる。そんな瞬間が、たまらなく気持ちよかったのを思い出しました。
きっと辻まこと氏が言うように、風がたどってきた旅を感じて、気持ちよくなっていたのかもしれません。今度はゆっくり風の話を聴いて、ぼくの心もどこかへ乗せていってもらいたいなあ。そう思うと、自然のなかを流れる風に出会いたくなります。今度の休みは、どこかに出かけよう。