タワーのある風景
ぼくの住む街でずっと建設中だった世界一高いタワーが完成しました。とはいっても1年以上前から外観はすでにできあがっていたので、もう見慣れています。でも、完成したことで、夜になると光ったり、タワーの根元に大きなショッピングモールができたりで、街はけっこう賑やかです。ショッピングモールの中には、たくさんのお土産屋さんやレストラン、さらには水族館まであって、タワー目当てで来た人々の用をその中ですべて満たせるべく充実した品揃えとなっています。
タワーができる前は、どんな風に街が変わっていくのか、楽しみであり、同時に心配だったりしたのですが、今のところ根元のモールの外は、それほど大きな変化はないようです。ぼくにとっては、タワーの華やかさと周囲の下町の佇まいがどうも馴染まず、まだその風景がしっくりきていません。特にライトアップすると、違和感はさらにひろがります。
高い建物がほとんどなく、小さな家が密集する下町にあらわれた、天高くそびえる青い光のタワーは、どこか非現実的でSFチック。ぼくらは、最先端の科学文明の国の選ばれた住民たちを羨望の眼差しで眺める下界の人々のような気分になったりします。
でも、本当は下界に昔からある曲がりくねった路地やその奥に長屋や古い建物が密集している下町の風景こそがこの街の一番の良さ。最近少しずつではありますが、それらの古い建物を活かした、新しいギャラリーやカフェが増えています。そこから新しい文化やコミュニケーションが生まれ、街が変化していくことは楽しみです。
これから10年後、ぼくの住む街はどんな風に変わっていくのでしょうか。そのとき、タワーは街の風景に溶け込んでいるのでしょうか。