2012年8月27日

「スティーブ・ジョブズ」


 
ぼくが初めて手に入れたコンピューターは、東芝のダイナブックというA5サイズのノートパソコンで、1996年に友人から安く譲ってもらったもの。ウィンドウズ3.1だったOSを発売直後の95にアップデートして使っていました。その頃は、ウィンドウズが圧倒的な時代で、仕事でデザインをする人でない限り、マックを買うという選択肢はあまりなかったと思います。
 
当時のマイクロソフトは、これからはハードではなくソフトウェアが重要な役割を示すという、新しい時代の幕開けを感じさてくれる象徴的な存在で、ウィンドウズ95発売時にCMで何度も流れたローリング・ストーンズの「Start me up」のイントロとともに、あたらしい何かが始まる期待を高めてくれました。コンピューターを立ち上げてブライアン・イーノによる印象的な起動音が流れた時は、本当にワクワクしました。
 
その後、1998年にiMacが発売され、アップルという存在を意識するようになりました。iMacは、他のパソコンとはまったく違った視点で作られた今までの常識を打ち破るモノに見えました。カラフルなiMacがコロコロ転がるCMには、今度はローリング・ストーンズの「She's a rainbow」が流れていて、ロック世代があたらしい時代を作っているのを実感して嬉しかったのを覚えています。
 
でも次に買ったのは、当時はまだ革新的なヒットを連発していたソニーのVAIO。iMacはモノとしてはすごいとは思いましたが、あの丸いデザインは好みではなかったし、正直マックの少しスノッブなイメージには若干反感を持っていました。ウィンドウズは完璧ではないけど開かれたオープンなイメージで、フリーの画像や音楽などの加工ソフトはたくさんあったし、それらで今まで出来なかった新しいことが無限に広がりそうな予感はあったのです。昔録音したバンドの音源をリミックスしたりしてCDに焼いてみたり、写真を加工して遊んだり、MP3の音源を保存しランダムに再生したり、パソコンは面白いことがたくさんできるオモチャのようでした。
 
はじめてマックを買ったのは2007年。その前にiPodを使って、アップル製品の哲学に感動したことと、さらにコンピューターはそれ自体に何かおもしろいことを期待するものではなく、目的を持って何かをするための道具であることに気付いたときに、マックは実に洗練された使いやすいマシンのような気がしたのです。そして、使ってみるとまさにそうで、それ以来アップルのファンとなりました。
 
今更ですが、本人公認の伝記と言われ昨年ベストセラーになった「スティーブ・ジョブズ」を読みながら、アップルの歴史とともに自分のコンピューターの歴史を思い出してしまいました。
 
革新的なモノを生み出す力は、熱い想いと執拗なまでの細部へのこだわりなんですね。彼の場合、それが行き過ぎて、容赦なく他人を傷付けたり、自分も何度も失敗していますが、でも、作り手たちの自らの哲学に従った限りない情熱こそが、人を感動させる何かを生み出す力であることをこの本と彼らの作った製品は教えてくれます。
 
 

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