Train-Train
暑い日が続きますが、お元気でしょうか。
先週は夏休みをいただき、久しぶりに一人旅をしてきました。一人旅の良いところは、自分と向き合える時間を持てること。そして、旅の大きな楽しみでもある移動する時間をしみじみとじっくり味わうことができます。ここではないどこかに向かって進んでいく。車窓から見える流れていく景色。動くほどに変わっていく空気とその匂い。移動していることで感じる高揚感。それを体感することこそ旅の醍醐味です。今回は青春18切符を使った鈍行電車の旅ということもあって、充分すぎるくらいの移動時間を味わうことができました。
鉄道も旅もやっぱりいいですね。「男はつらいよ」で寅さんが、夜の田舎を走る汽車の窓からポツンと見える家の灯を眺めて郷愁にかられるシーン。自由を求めて鉄道に無賃乗車で乗り込み旅をするアメリカのホーボー。宮沢賢治の「銀河鉄道に、内田百閒の「阿房列車」。鉄道は記憶の奥にある身近な旅の原風景を思い出させてくれる乗り物なのです。
栄光に向かって走るあの列車に乗っていこう〜と口ずさみながら電車に飛び乗って、首都圏を離れ山や海などが見えてくれば、今度は頭の中に「世界の車窓から」のテーマソングが流れて、旅情に浸ります。
暗い夜の単線の駅で、反対側からの列車が通り過ぎるのを待つため、しばらく停車している。そんな時は電車を降りてホームで、山の匂いを嗅ぎながら夜空を見上げる。そして、電車が動き出すと、窓からぽつんと光る家の灯を眺めて寅さんよろしく感傷に浸る。つい手持ち無沙汰になり本を読んでいると、自然と眠ってしまう。電車の終着駅で駅員さんに起こされて、また違う電車に乗り換える。
朝6時に電車に乗って、鈍行列車を何度も乗り継ぎ、最初の目的地の弘前に着いたのは、夜の10時過ぎ。電車に乗りながら読んでいた太宰治の「津軽」で、昭和19年に太宰が東京から青森に行くまでの時間とほぼ同じ時間を要したことに気付きました。必然的にノートを開く時間も多くなります。 寂しかったりするときもありますが、たまにはこんな旅も必要なのかもしれません。