Song of the Week
昨年7月にトラベラーズファクトリーでライブをしてくれた山田稔明さんのブログで、定期的にアップされているSong of the Weekという記事が最近の楽しみのひとつ。山田さんが毎回好きな曲を1曲とりあげて弾き語りでカバー。その演奏をブログ上で聴くことができます。同時にその曲の思い出や考察を、訳詩とともに掲載しています。
ぼくは、もともとカバー曲が好き。カバー曲って、聴き込んだ曲でも新たな一面を発見できたり、忘れかけていた魅力を思い出したりすることができるんですよね。Song of The Weekで取り上げられている曲は、たまたまぼくが好きな曲ばかりで、その曲に対する山田さんの愛情と敬意がたっぷり感じられるのも嬉しくなります。
ここで紹介されている直近の3曲は、ブルース・スプリングスティーン、U2、スザンヌ・ヴェガがそれぞれ80年代にリリースした曲で、どれもぼくが高校生の頃に何度も聴いていた思い出深いアルバムに収められた曲。最近すっかりご無沙汰となっていたこれらのアルバムを久しぶりに通して聴きながら、その頃の気分を思い出してしまいました。
スプリングスティーンの「BORN IN THE USA」は、当時の大ヒットアルバム。そのなかで山田さんがピックアップしたI'm going downはほとんど忘れかけていた目立たない曲ですが、その後いくつかの恋愛を経験した今あらためて歌詞と照らし合わせて聴くと、恋愛中の男のなさけない苦悩に共感できて心に響きます。スプリングスティーンは、やり切れない日常の中でもがく、どこか冴えない男の歌がいいんだよなあ。
U2の「The Joshua Tree」もインディーバンドがメジャーバンドに出世した大ヒットアルバムで確かCDプレイヤーを買った直後に手に入れたCDということもあってかなり聴きこんだ記憶があります。ロック通を気取っている友人は、U2は初期の方が良いなあと言っていたけど、ぼくは激しさを内に秘めたようなこのアルバムが一番好き。
ショートカットが印象的だった当時のスザンヌ・ヴェガは、透明感とはかなさを感じるどこか内省的雰囲気が魅力的で、女の子とうまくコミュニケートできなかった高校時代のぼくにとっては、理想の女性像でした。
これらの音楽を聴きながら、うまく自分を表現できず、ありたい理想の自分と現実の自分に大きなギャップがあった高校生の頃の自分に向かいあう旅を楽しんでみたり、同時に忘れかけていた曲の魅力をまた思い出したりしています。
そして、Song of The Weekのひとつの楽しみは、これらのアーティストからの影響や想いを想像しながら、山田さんのCDを聴きなおすこと。hanaleeの歌詞にある、屋上の秘密基地で活字を追いながら心を旅をしていたときに、聴いていた音楽は、この曲かな、なんて想像をしてみると、よりリアルに情景が浮かんできます。
ずっと品切れしていた2枚の山田さんのソロアルバムが再リリースしたようなので、興味がある方はこちらをご覧ください。それぞれ家路と旅路をテーマにした、ちょっと切なくて、温かい素敵な音楽です。そして、山田さんが今制作中のあたらしいアルバムもとても楽しみ。またトラベラーズファクトリーで歌声を聴きたいなあ。